編集:伴名練
出版社:早川書房
基本的に書籍化されていない新世代の作家を伴名練がセレクトしたアンソロジー。
ほぼ知らない名前ばかりだが、バラエティに富んでいて案外楽しめた。
また、各作品に関連するジャンルのおススメ作品を伴名練がピックアップして
解説しているため、読みたい本が増えてしまうという特典付き(笑)
特に面白かったのが、下記5作品。
大正時代のお屋敷を舞台にした女性二人の運命を描いた「九月某日の誓い」、
中間言語が爆発的に影響を広げていく「くすんだ言語」、
ドンキが増殖するという驚きに満ちた設定の「ショッピング・エクスプロージョン」、
京都が蜘蛛の巣に覆われ、世界に・・「無脊椎動物の想像力と創造性について」、
子供たちが流れ星を見つけるために毎夜集まる理由が語られる「夜警」。
「くすんだ言語」と「無脊椎動物の想像力と創造性について」が特に好み。
奇しくも面白かった作品は増殖テーマが多めになってしまったがたまたまでしょう。
それ以外の作品も熊を主人公にした「冬眠世代」や
劉慈欣の「円」を彷彿させる「大江戸しんぐらりてい」など多様性があり、
今後の日本のSFもだいぶ期待ができそうだ。
乱暴な言い方かもしれないが、昔と違ってこれからのSFはより多様的になって
純文学とかミステリーとか違う分野と見紛うような作品が爆発的に
増えていくのではないかと思う。
そんな変化も楽しみ。
ただ、個性的な名前の人が多くてどう読むのかわからなかったりして
覚えられないのが難点(苦笑)
【収録作品】
八島游舷 :「Final Anchors」
斜線堂有紀 :「回樹」
murashit :「点対」
宮西建礼 :「もしもぼくらが生まれていたら」
高橋文樹 :「あなたの空が見たくて」
蜂本みさ :「冬眠世代」
芦沢央 :「九月某日の誓い」
夜来風音 :「大江戸しんぐらりてい」
黒石迩守 :「くすんだ言語」
天沢時生 :「ショッピング・エクスプロージョン」
佐伯真洋 :「青い瞳がきこえるうちは」
麦原遼 :「それはいきなり繋がった」
坂永雄一 :「無脊椎動物の想像力と創造性について」
琴柱遥 :「夜警」