吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

発狂した宇宙 ::フレドリック・ブラウン

墜落したロケットの真下にいたSF雑誌<サプライジング・ストーリー>の編集者キース・ウィントンの遺体は、木端微塵になったのか、ついに発見されなかった。ところが彼は生きていた--ただしそこは、身の丈7フィートの月人が闊歩し、地球がアルクトゥールス星…

炎の眠り ::ジョナサン・キャロル

ぼくは呆然としていた。目の前に、三十数年前に死んだ男の墓がある。そこに彫られた男の肖像が、ぼくだったのだ。そのとき、見知らぬ老婆が声をかけてきた。「ここにたどりつくまで、すいぶん長いことかかったね!」捨て児だったぼくは、自分がなにものなの…

蝶 ::皆川博子

インパール戦線から帰還した男はひそかに持ち帰った拳銃で妻と情夫を撃つ。出所後、小豆相場で成功し、氷に鎖された海にはほど近い“司祭館”に住みついた男の生活に、映画のロケ隊が闖入してきた…。現代最高の幻視者が紡ぎぎ出す瞠目の短篇世界。(「BOOK」デ…

アメリカの夜 ::阿部和重

今回読むまで勘違いしていたのですが、阿部さんは80年代デビューだとずっと思っていました。90年代だったんですね。騒がれたのを覚えていてずっと気にしながらも読まずに来た作家です。当時蓮實重彦や柄谷行人が褒めてたらしいし、数年前に源ちゃんが評価し…

越境者 松田優作 ::松田美智子

松田優作が亡くなって、もう20年以上経っているのかと思うと時が経つのは早いものです。本書は松田優作の最初の妻であり、ノンフィクションライターでもある松田美智子さんが書いた評伝であり、妻しか知らない松田優作が語られている。 松田優作の活躍に関し…

願い星、叶い星 ::アルフレッド・ベスター

短編は「分解された男」とはちょっと印象が違って意外と切れ味がありました。スタージョンと同じような印象を受ける作品がいくつかありましたがクスリとさせてくれる明るさを仄かに感じさせてくれます。 「ごきげん目盛り」「ジェットコースター」「願い星、…

象と耳鳴り ::恩田陸

先日行った三菱一号館美術館の記事を書いたところとても印象的な展示品だった「曜変天目」が恩田陸さんの「象と耳鳴り」にも出てくるとべるさんに教えて頂きました。本書は積んでいたので、ようやく読む理由ができました。ありがとうございます!(積んでお…

高炉の神様 ::佐木隆三

赤朽葉家の伝説を読み、本書を積んでいることを思い出した。今こそ読む時期でしょう。 明治初期に生まれ、八幡製鉄所で「宿老」として98歳まで働いた職工、田中熊吉さんの溶鉱炉に懸けた人生を描いています。著者の佐木隆三さんといえば「復讐するは我にあり…

ケルベロス第五の首 ::ジーン・ウルフ

地球より彼方に浮かぶ双子惑星サント・クロアとサント・アンヌ。かつて住んでいた原住種族は植民した人類によって絶滅したと言い伝えられている。しかし異端の説では、何にでも姿を変える能力をもつ彼らは、逆に人類を皆殺しにして間の形をして人間として生…