吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

火星年代記 ::レイ・ブラッドベリ

随分前(十代)に読んだっきりなので再読しました。内容はほとんど覚えてなかったのですが、当時の自分としてはきっと退屈に感じて飛ばし読みしたのでしょう。感受性が豊かだったら楽しめたのかもしれません。が、再読してみて今なら断言できます。やはり名…

海賊モア船長の憂鬱(上下) ::多島斗志之

イギリス東インド会社に勤めるクレイは、インド東海岸にある港街、マドラスに到着した。謹厳実直で知られる上席商務員が“マドラスの星”と称される400 カラットのダイアモンドを手に姿を消したのだ。誘拐か、はたまた着服か。事件にはどうやら「果敢にして知…

ザ・万歩計 ::万城目学

第二弾のエッセイ、「ザ・万遊記」を先に読んでしまいましたが、はっきり言うとこの最初のエッセイのほうが断然面白い。それを考えると読む順番はこれでよかったのかもしれません。 共感できる話がいくつかありましたが、その中でもたけし映画の「Kids Retur…

タイタンの妖女 ::カート・ヴォネガット・ジュニア

シニカルでありながらユーモアと愛に溢れている作品でした。言葉にすることが難しいが、読後には寂寥感とか無力感が混じった哀しさを感じつつそのなかに小さな暖かみを感じさせるような印象を受けました。諸行無常という言葉もふと浮かびます。「猫のゆりか…

押入れのちよ ::荻原浩

今くらいの時期に読もうと積んであったんですけど、ようやく棚卸しできました。ホラー短編集ですけど、とても怖い話というよりも、ちょっと怖いくらいですね。ほのぼのする印象の「コール」「押入れのちよ」「しんちゃんの自転車」人間の闇を描いた「お母さ…

スポンサーから一言 ::フレドリック・ブラウン

傑作集と重複する作品もありますが、何度読んでも面白いものは面白い。いずれの作品もバラエティに富んだアイデアの塊です。ショート・ショートはいずれもキレがいい。少し長めの作品も時代を感じさせることを省けば充分楽しめます。よくあるパターンだな、…

ハーモニー ::伊藤計劃

本作は「虐殺器官」、「メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット」で描かれた混乱を経た後に選択された世界を描いている。今まで彼が描いてきた世界観が非常にわかり易く、そして彼の心の最深部が最も如実に描かれた作品だと言えそうだ。 「虐殺器…

倉橋由美子の怪奇掌篇 ::倉橋由美子

夜になると体を離れて首だけが恋人のもとに通う娘の怪しげな恋慕と残酷な死「首の飛ぶ女」。長風呂がたたってガイコツになった少年の病名は突発性溶肉症と診断された「事故」。夢の中に現われる世にも醜悪な男のたくらみ「交換」。元宰相ボーブラ氏はいかに…

分解された男 ::アルフレッド・ベスター

第一回ヒューゴー賞受賞作(1953年)をようやく読むことができました。ガチガチのSFだと思っていましたが、SFミステリと言ってもいいですね。 時代背景は24世紀、人類には人の心を読み取ることができる「超感覚者」(エスパー)たちが存在していた。第一級か…

それからの海舟 ::半藤一利

幕末の動乱期の中、幕臣の中心として江戸城無血開城という大仕事を成し遂げた後の人生を勝海舟はどう生きたのか。新旧相撃つ中で旧幕臣たちの生計をたてる道を探り、福沢諭吉らの批判を受けながらも明治政府の内部に入り、旧幕府勢力の代弁者としての発言力…

蒸気駆動の少年 ::ジョン・スラデック

既存のタイム・パラドックスをあざ笑う表題作、スプラスティック・コメディ「古カスタードの秘密」、あの“四重奏”の荒唐無稽なパロディ「ベストセラー」、重力はないと“証明”する男の狂気を描く「月の消失に関する説明」、名探偵のサッカレイ・フィンやフェ…