吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2020-01-01から1年間の記事一覧

2020年の読書を振り返る

2020年は新型コロナ流行という思いも寄らぬ事態に翻弄されたわけだが、2021年は収束してほしいと切に願うばかりです。 さて、コロナ禍にあって通常なら読書冊数は増えるかと思いきや、案外読めなかったのは何故だろう。むしろ、ぐっと減った昨年を更に下回っ…

ラヴクラフトの遺産

著者:ロバート・ブロック/レイ・ガートン/モート・キャッスル/ グレアム・マスタートン/ブライアン・ラムレイ/ゲイリー・ブランナー/ ヒュー・B・ケイヴ/ジョゼフ・A・シトロ/ チェット・ウィリアムスン/ ブライアン・マクノートン/ジーン・ウル…

ニッケル・ボーイズ

著者:コルソン・ホワイトヘッド翻訳:藤井光出版社:早川書房 大学進学を夢見ていたアフリカ系アメリカ人の高校生エルウッド。ところが無実の罪で少年院に送られてしまう。暴力と虐待の日常に放り込まれたエルウッドはそこで出会ったターナーと友情で結ばれ…

U (ウー)

著者:皆川博子出版社:文藝春秋 17世紀初頭のオスマン帝国と第一次世界大戦中のドイツ帝国を舞台に3人の少年たちの時空を超えた不思議な運命を描く物語。 オスマン帝国に徴用され、ムスリムに改宗させられた3人の少年が戦争に翻弄されながらしぶとく生きる…

戀童夢幻

著者:木下昌輝出版社:新潮社 本能寺の変、千宗易の切腹、豊臣秀次の切腹など戦国の世に名高い数々の事件すべてに関わっていたとされる加賀邦之介。横死した信長と信長を葬った光秀、森乱(蘭丸)や梅若太夫、秀吉や家康ら錚々たる人物たちを芸能と妖しい魅…

真夜中のたずねびと

著者:恒川光太郎出版社:新潮社 5編からなる連作?短編集。 ホームレスとなった少女が占い師の老婆と暮らし、 その老婆の娘の遺体回収を依頼される「ずっと昔、あなたと二人で」は 何とも切ないが少女を巡る厳しい現実と、さばさばとした文体は よくも悪く…

家が呼ぶ --物件ホラー傑作選

著者:若竹七海/三津田信三/小池壮彦/中島らも/高橋克彦/小松左京/ 平山夢明/皆川博子/日影丈吉/小池真理子/京極夏彦出版社:筑摩書房 家を題材にしたホラーアンソロジー。作家人を見て即買いして、あとは合間にポツリポツリと読んでいた。 小松左…

武器としての資本論

著者:白井聡出版社:東洋経済新報社 もちろん(笑)、資本論は読んでいない。読んでみたいと思うことは何度かあったが、結局手が出ないまますっかりオッサンになってしまった。今更読んでも遅いかもしれないが、軽く読めそうなので挑戦した。かなり抜粋して焦…

囚われの山

著者:伊東潤出版社:中央公論新社 八甲田雪中行軍訓練を題材としたミステリー仕立ての作品。伊東潤さんの現代ものは初めて読みました。八甲田雪中行軍を描くパートと、当時の謎を特集記事にして雑誌に掲載しようとする出版社を描く現在のパートが交互に描か…

KGBの男-冷戦史上最大の二重スパイ-

著者:ベン・マッキンタイアー翻訳:小林朋則出版社:中央公論新社 イギリスのMI6に協力するソ連のKGBに所属するゴルジエフスキーがどのような経緯でスパイとなったか、そしていかにソ連を脱出したか、更に脱出後の動向が描かれるノンフィクション。 父親や…

魔王 -奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男-

著者:エヴァン・ラトリフ翻訳:竹田円出版社:早川書房 天才プログラマー、ポール・コールダー・ル・ルーがたった一人で始めたビジネスはオンライン薬局事業。法のグレーゾーンを巧みに利用して巨額ビジネスに育て上げたル・ルーはサイバー空間を利用して次…

黒き侍、ヤスケ:信長に忠義を尽くした元南蛮奴隷の数奇な半生

著者:浅倉徹出版社:原書房 イエズス会宣教師ヴァリニャーノの奴隷として来日し、天下を取る直前の織田信長の目に留まるや「弥助」という名を得て信長の部下となった黒人の半生が描かれる。 織田信長に関心がある人には名前こそ認知されているだろうが、詳…

白い病

著者:カレル・チャペック翻訳: 阿部賢一出版社:岩波書店 戦争の足音が間近に迫っている中、「白い病」と呼ばれる伝染病が流行し始める。 50歳以上が罹患し、死んでいくという設定だが閉塞感漂う若者たちからすれば 自分たちにチャンスが到来してくるだろ…

断頭台/疫病

著者:山村正夫出版社:竹書房 書店で「異常心理ミステリー傑作集」の文字に目が留まり、何となく購入。1959年から1970年の間に発表されている作品ばかりなのでかなり古いのだが、とても読み易く、さほど古さを感じさせない力作ばかり。未読作家(多分)である…

半沢直樹 アルルカンと道化師

著者:池井戸潤出版社:講談社 ドラマを盛り上げるタイミングで続編か?と思いきや半沢の若き時代のお話です。 大阪西支店に着任して間もなく、早速支店長とぶつかりそうな気配が漂います。 東京本店から大阪に異動したのも業務統括部長を論破したことが原因…

構造素子

著者:樋口恭介出版社:早川書房 ハヤカワSFコンテスト大賞とのことで読んでみた。 正直なところ読み辛くて途中投げ出そうかと思うも、 ここは我慢のしどころと続けてみた。 まあ、結局読み終えることができたが、さほど印象に残る作品ではなかったかな。 こ…

信長 空白の百三十日

著者:木下昌輝出版社:文藝春秋 木下さんが「信長公記」を中心に研究、熟読したうえで色々と自分なりに 想像、もしくは妄想を楽しんでいる様が目に浮かぶようだ。 先日抜粋版ではあるが「信長公記」を読んだばかりなので 書店で見かけるや即購入。 呼ばれた…

三体Ⅱ 黒暗森林 (上/下)

著者:劉慈欣翻訳者:大森望/立原透耶/上原かおり/泊功出版社:早川書房 遥かに高い科学力を持つ三体文明が地球に向けて動き出す第二弾。 迎え撃つ地球側は「面壁者」で対抗しようと準備をすすめるが、 三体文明が到達するのは400年後と気が遠くなる設定…

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍

著者:大木毅出版社:岩波書店 クレフェルトの「補給戦」でも言及されていたと思うが(曖昧だが・・・)、 ドイツ軍の兵站に対する考え方がより具体的に示されていて理解が深まった。 またドイツとソ連(ヒトラーとスターリン)の悲惨な戦争が どのようなイ…

写楽

著者:皆川博子出版社:KADOKAWA 観ていないが確かに映画はあったことは覚えている。 そのシナリオを皆川博子が書いていたとは巻末を読むまで知らなかった。。。 写楽の正体は諸説あるが、本作でも役者として描かれている。 彼がどんな生活を送り、蔦重こと…

筒井康隆、自作を語る

著者:筒井康隆編集:日下三蔵 出版社:早川書房 日下三蔵によるインタビューと、トークイベントを書き起こした本。 それと自選短篇集の解題と全著作リストが収録されている。 文庫版が出たので購入。 筒井作品は全て読んでいるわけではないので、巻末リスト…

四畳半タイムマシンブルース

著者:森見登美彦出版社: KADOKAWA 久しぶりのモリミーです。 原案となっている「サマータイムマシン・ブルース」は舞台、映画なのだが 知識が全くないのでコラボといっても何が?という感じだが 何とかなるでしょ、と読み始める。 四畳半神話体系の面々に…

じんかん

著者:今村翔吾出版社:講談社 怒涛の図書館本が落ち着いて、ようやく積んでいた本書を読むことができました。 直木賞は逃したものの、非常に面白い作品でした。 織田信長が小姓の狩野又九郎に松永久秀を語るという設定にまず驚かされるが、 度重なる裏切り…

子どもたちの階級闘争 -ブロークン・ブリテンの無料託児所から-

著者:ブレイディみかこ出版社:みすず書房 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で書かれていた時期より前にイギリスの無料託児所で保育士として経験したこと、感じたことが綴られる。「底辺託児所」と本人は称しているが、その託児所に預けられ…

御社のチャラ男

著者:絲山秋子出版社:講談社 ジョルジュ食品という会社に、クセの強い社長の伝手で中途入社してきた 部長(=チャラ男)を巡るお話。 と言いたいところだが、チャラ男が主役という感じではない。 会社内の社員たちの視点で語られる様々な人間模様が次々と語…

銀河の片隅で科学夜話

著者:全卓樹出版社:朝日出版社 サブタイトルは「物理学者が語る、すばらしく不思議で美しい この世界の小さな驚異」 久しぶりに内容を引用します。自分の言葉ではうまく説明できないので。 内容(「BOOK」データベースより)流れ星はどこから来る?宇宙の…

ストーカーとの七〇〇日戦争

著者:内澤旬子出版社:文藝春秋 内澤さんの著書を読むのは2冊目。ご本人がストーカー被害にあってしまったことを包み隠さず書いているが、ここまで自分のことを書くのは辛かっただろう。ストーカー事件を題材にしている書籍は少なく、ましてや本人が経験を…

茶聖

著者:伊東潤出版社:幻冬舎 「天下人の茶」では秀吉と利休の関係を、周囲の人からの視点で紐解いていたが、 本作はがっつりと利休の内面が描かれていた分、格段に面白い。 信長、秀吉に重用され、茶の湯で武人を鎮め静謐を求め続ける利休の生涯が描かれる。…

信長公記―戦国覇者の一級史料

著者:和田 裕弘出版社:中央公論新社 織田信長に関連する作品では基本中の基本となる「信長公記」。いつかは読んでおきたかったが、興味深い部分を抜粋して解説してくれている新書として読めたのは嬉しい。信長の身近にいた筆まめの太田牛一が残した記録だ…

ルクレツィア・ボルジア(上/下)

著者:中田耕治出版社:河出書房新社 昔から「チェーザレ・ボルジア」に興味を持っていたくせに、これも10年程積んだままになっていた。ようやく読んだものの上下巻とはいえ時間がかかりすぎの読書でした。 悪名高きチェーザレ・ボルジアの妹であり兄同様悪…