吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

【か行】の作家

まむし三代記

著者:木下昌輝出版社:朝日新聞出版 いやあ、面白い!木下さんの代表作がまた一つ増えましたね。斎藤道三絡みでこれほど楽しめた作品はないかも。道三の下克上が一代で為されたものではないとの最新の説を基本としたためとても新鮮なうえに、ち密に構築され…

老乱

著者:久坂部羊出版社:朝日新聞出版 高齢化社会の先頭を走る日本にとって認知症の増加は避けて通れない。自分の母親もアルツハイマー型認知症が進行し、身内のこともわからず、話すこともできずに寝たきりとなっているため、この作品を無視できなかった。 …

信長、天を堕とす

著者:木下昌輝出版社:幻冬舎 自分は本当の恐怖を知っているのだろうか。強さとは何か。自問しながら生きる信長の心理描写にかなりのページが割かれる。折々の戦にこんな心持で向かっていたのかと思うと少し切ない気がするが、木下作品はやはり読ませてくれ…

恐竜まみれ 発掘現場は今日も命がけ

著者:小林快次出版社:新潮社 慌ただしい年末年始に読むにはちょうどいい読み易さでした。 かなりの難所で地味で根気のいる作業をすることが自分に向いているかは別として恐竜を発掘して研究するという仕事は何となく憧れる。実際は大変なんだろうな、とい…

くらげが眠るまで

著者:木皿泉出版社:河出書房新社 木皿泉の初期作品のシナリオ本。年の差夫婦(イッセー尾形、永作博美)のちょっとした日常が描かれるシチュエーションコメディー。残念ながらこの作品は見ていないが、二人の顔や仕草が頭の中で綺麗に再生され楽しめた。既…

ぱくりぱくられし

著者:木皿泉出版社:紀伊國屋書店 脚本ユニット木皿泉の二人によるエピソードや思いが会話形式で進行するパート、妻鹿さんによるエッセイのパート、デビュー作のラジオシナリオ「け・へら・へら」の3部構成。本書の題名からまさか「ぼくのスカート」に関す…

金剛の塔

著者:木下昌輝出版社:徳間書店 木下さんが少しだけとはいえ現代を描いたのは初めてではないでしょうか。ちょっと新鮮でした。 地震で倒壊したことがない五重塔の歴史と建築にかかわる職人たちの様を、時代を超えて描いている。昨年、森美術館で「建築の日…

周瑜 「赤壁の戦い」を勝利に導いた呉の知将

著者:菊池道人出版社:PHP研究所 かなり前から積んでいたが、整理していたら出てきたので読みました。三国志は多くの魅力的な人物が登場するが、呉の中ではトップクラスの知名度なので凡そどのような活躍をしてきたかは知っているものの機会があればやはり…

カゲロボ

著者:木皿泉出版社:新潮社 児童書のような短編集ように見えるが、人間の持つ毒を描きながら赦しと癒しをも描く連作集となっている。相変わらず普通の言葉で紡がれる物語ではあるが、ちょっと違うテイスト。心の奥にある闇の描写は気持ちのいいものではない…

炯眼に候

著者:木下昌輝出版社:文藝春秋 織田信長を取り巻く人物目線から見た天才織田信長を描く連作集。 サクサクと読み易い割りに合理的に状況を見極め、何手も先を読みながら天下を 目指す信長の凄さが浮き上がる手際は木下さんらしい。 ちょっと信長が凄すぎるけ…

ヤノマミ /国分拓

先日読んだ「空白の五マイル」と同時に大宅壮一ノンフィクション賞を獲得した作品だったので読みました。 ブラジルの先住民、ヤノマミ族の集落ワトリキ(風の地)で150日間に及ぶ同居生活をした著者はNHKディレクター。この取材に関しては番組としても放映さ…

空白の五マイル /角幡唯介

副題::チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む 開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞のダブル受賞作品です。 著者は早稲田大学探検部OB。すなわち高野秀行さんの後輩です。 大学卒業後に朝日新聞で5年間の記者生活を経ているが、大学…

センセイの鞄 ::川上弘美

ひとり通いの居酒屋で37歳のツキコさんがたまさか隣あったご老体は、学生時代の国語の恩師だった。カウンターでぽつりぽつりと交わす世間話から始まったセンセイとの日々は、露店めぐりやお花見、ときにささいな喧嘩もはさみながら、ゆたかに四季をめぐる。…

なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日 ::門田隆将

1999年、山口県光市で、23歳の主婦と生後11カ月の乳児が惨殺された。犯人は少年法に守られた18歳。一人残された夫である本村洋は、妻子の名誉のため、正義のため、絶望の淵から立ち上がって司法の壁に挑む。そして、彼の周囲には、孤高の闘いを支える人々が…

倉橋由美子の怪奇掌篇 ::倉橋由美子

夜になると体を離れて首だけが恋人のもとに通う娘の怪しげな恋慕と残酷な死「首の飛ぶ女」。長風呂がたたってガイコツになった少年の病名は突発性溶肉症と診断された「事故」。夢の中に現われる世にも醜悪な男のたくらみ「交換」。元宰相ボーブラ氏はいかに…

サクリファイス --近藤史恵

今更ながらようやく読むことが出来ました。雑誌「Story Seller1-2」の「プロトンの中の孤独」、「レミング」とサクリファイスの外伝から入ったので時系列に沿って読んだことになります。おかげで自転車のロードレースをよく知っているような錯覚を覚え、すん…

クリムゾンの迷宮 --貴志祐介

本書裏表紙より引用藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲーム…

フェルメール全点踏破の旅 --朽木ゆり子

キアラン・カーソンの「琥珀捕り」を読んで俄然フェルメールの絵画に関して知りたくなりました。その流れで「私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件」(未読)を買ったわけですが、フェルメールの絵が具体的に判れば文章の理解度も上がるだろう、という理由…

玩具修理者 --小林泰三

短編の「玩具修理者」と中編の「酔歩する男」の二編です。第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。 「玩具修理者」 ある夏の日。喫茶店の中での二人の男女の会話。女は七つか八つの頃のできごとを男に語っている。「ようぐそうとほうとふ」という名前を持ち…

青の炎 --貴志祐介

この作品はかなり評判が良かったようですね。非常に書きにくいのですが期待が高すぎたせいか、辛口気味です。ミステリーっぽい印象を受けなかったのですが、とりあえずは思ったままをつらつらと。読んでいて感じた印象は全体的に会話が古臭いなあ、ってこと…

黒い家 --貴志祐介

第4回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。 ようやく、貴志さんでビューです。 主人公の若槻は保険金の支払い査定という業務を行っているのだが、作者自身、保険会社に勤めていただけあって内情がかなり詳細に書き込まれています。ストーリーは若槻の日常業務を綴…

編集者という病い --見城徹

ついに文庫化されました。本を読んでいて作家さんに興味はあっても、編集さんに興味が涌く事は有りませんでしたが、昔々「つかこうへい」とか、「村上龍」とかを読んでいると「見城」という編集者の名前が出てくることがあり、いつの間にか編集者としては唯…

あたりまえのこと --倉橋由美子

「BOOK」データベースより引用小説を楽しむためのヒント教えます!よい小説を書きたい人、面白い小説を読みたい人、すべての小説好きに贈る最初にして最後の小説論ノート。宣長から鴎外、カフカ、谷崎、クノー、ハイスミスまで古今東西の文芸作品を渉猟する倉…

怖ろしい味 --勝見洋一

光文社Webサイトより引用その鮨屋は、職人が一切顔を見せない不思議な店だった。長い暖簾の奥の暗闇から、つるりとした白い手がのぞく。そして供される鮨は、あまりにも見事なものだった――。(「鮨屋の怪」) 練り上げられた文章が掬い上げる虚実皮膜の世界…

凍える島 --近藤史恵

「サクリファイス」に行くまでの過程として読んでおかねばと思い、いつも通りまわり道の読書を楽しむことにした。「Story seller」で読んだ「プロトンの中の孤独」が結構男性っぽい硬質な作品に感じられたのですが、本作はむしろ女性っぽい柔らかさを感じま…

オヨヨ島の冒険 --小林信彦

ビバ!オヨヨ! ついに再読を果たしました。ありがとう、恩田陸さん!懐かしい、嬉しい、よくぞ復刻してくれました!書店で見かけた途端買ってました。以前、「怪物がめざめる夜」で書いたのですが、子供の頃に熱中してたんです、オヨヨシリーズ(笑) ウェ…

日本SF全集・総解説 --日下三蔵

SFを特に好きな分野だとは思っていないのですが、作家的にはSFに分類されている人は何人か読んでいます。この本は架空の日本SF全集を作るという、SFマガジンで連載してい企画らしいのですが、時系列で日本の代表的なSF作家の、代表的作品の目録みたいになっ…

か行の作家

【か】●開高健パニック・裸の王様●架神恭介仁義なきキリスト教史●角田光代、岡崎武志古本道場●角田光代さがしもの●角幡唯介空白の五マイルアグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極漂流極夜行新・冒険論●片岡義男ラジオが泣いた夜●勝見洋一…

逃れの街 --北方謙三

これもまたずいぶん前にはまった作者です。ハードボイルド。今は歴史に興味があるようで、そこであいかわらず男(漢?)を書いているのだろうか。10代に読んでそれっきり。北方版三国志は興味があるけれどずっと思案中。ストーリーは暴力団員を殺してしま…

アルキメデスは手を汚さない --小峰元

ようやく積読状態から脱出させました。中学生のときに読んだ青春学園ミステリー。手許になかったので友達に借りたのかもしれません。去年復刊して平積みされていたので、懐かしくて購入しておきました。江戸川乱歩賞も受賞していたことは購入するまで知りま…