吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

読書記録

伝説の編集者 坂本一亀とその時代

著者:田辺園子出版社:河出書房新社 坂本龍一が、父親が生きているうちに父ことを本にしてほしい、 という意向からできた作品との事。 結局父親の意向により死後に世に出たようだが。 戦後文学の名作に関わっていた編集者をかつての部下ならではの視点で描…

777 トリプルセブン

著者:伊坂幸太郎出版社:KADOKAWA 殺し屋シリーズはやはり面白い。 ホテルを舞台に次々と現れる個性豊かな殺し屋たちのスリリングな駆け引きは 目が離せず、大事にゆっくり読めよと自らに言い聞かせているのに 一気読みしてしまった。 「マリアビートル」に…

怪獣保護協会

著者:ジョン・スコルジー翻訳:内田昌之出版社:早川書房 パンデミックが無ければ生まれなかった作品なのかもしれない。 複雑で重厚な作品を執筆していたが様々な理由で完成できず、 真逆ともいえるポップな作品を一気に書き上げたそう。 ひょんなことから…

襲撃

著者:ハリー・ムリシュ翻訳:長山さき 出版社:河出書房新社 第二次大戦末期のオランダ。警視が何者かに射殺された事件がきっかけに 両親や兄を殺された少年、アントンの人生と事件の真相が描かれる。 人が生きる上で起きる物事には裏も表も、良いことも悪…

言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか

著者:今井むつみ/秋田喜美出版社:中央公論新社 確か以前何かで高野秀行さんが本書の事に触れていたのを見て読んでみることに。 専門家が言葉の成り立ち、進化を「オノマトペ」と「アブダクション」を キーワードに具体的に提示してくれている。 言葉の発…

五月 その他の短篇

著者:アリ・スミス翻訳:岸本佐知子出版社:河出書房新社 12か月にわたる12の短編集。 初読みの作家さんだと思っていたが、「コドモノセカイ」で一作読んでいた。 岸本さん翻訳なのでハズレは無いと思っていたが期待通り。 ただし一度読んだだけでは理解で…

「静かな人」の戦略書─騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法

著者:ジル・チャン翻訳:神崎朗子出版社:ダイヤモンド社 題名で参考になるかなと思い読んでみた。 簡単なチェックリストではやはり自分が内向型に分類されることが確認できた。 ビジネスには外交的な人の方が有利だなと思うが、 無理にそちら側に行かなく…

イラク水滸伝

作者:高野秀行出版社:文藝春秋 偉そうで申し訳ないが最近の高野さんの作品レベルの高さは目を見張るものがある。 イラクの事は詳しくないが、水滸伝に例えてくれるだけで理解が格段に アップした気がする。 昔からの緩い面白さは維持しつつ、訪れた国の複…

黒い海  船は突然、深海へ消えた

著者:伊澤理江出版社:講談社 2008年、太平洋上で漁船・第58寿和丸が突如沈没した。 20人中生き残ったのはわずか3人。 船から流出した油にまみれながら生き残った船員の証言は二度の衝撃があり、 なおかつあっという間の沈没だったということ。 ところが調…

AIとSF

編集:日本SF作家クラブ 出版社:早川書房 「ポストコロナのSF」「2084年のSF」に続くアンソロジー第3弾。 飛浩隆、円城塔の名前があったので購入。 イメージとして真逆なところを狙ったのかもしれないが、 良し悪しは別として宗教とAIを絡ませる作品が何作…

安倍晋三 回顧録

著者:安倍晋三聞き手: 橋本五郎聞き手、構成:尾山宏監修:北村滋 出版社:中央公論新社 事件から1年以上経過したが、ニュースを見ているといまだに名前が 出てくることから大きな影響力を持っていたのだなと改めて思う。 柔軟性のあるリアリストというの…

裸の大地 第1部 狩りと漂泊

著者:角幡唯介出版社:集英社 基本的に地図を持たず、狩りをしながらグリーンランドを探検するという 思いに駆られた著者の挑戦が描かれる。 「極夜行」のように暗闇の中での探検ではないため読み手側の緊張感は 多少薄まった気がするが過酷なことに変わり…

音楽は自由にする

著者:坂本龍一 出版社:新潮社 坂本龍一が57才時点でそれまでの半生を振り返った自伝。 ミュージック・マガジン増刊号で高橋幸宏の特集を読んでいる最中に 坂本龍一が旅立ち、同誌の坂本龍一追悼増刊号を立て続けに読んだ後なので 本書を読まずにはいられな…

迷宮遊覧飛行

著者:山尾悠子出版社: 国書刊行会 少しづつ読んでいたので時間がかかってしまったが、何度でも再読できる内容の エッセイやら書評やら。 肩の力を抜いた文章もあれば影響を受けた作家さんたちへの 熱いオマージュが感じられる文章もあり、いずれも読んでい…

吹雪

著者:ウラジーミル・ソローキン翻訳:松下隆志 出版社:河出書房新社 酷暑が続く日々の中で読む極寒の風景は何とも不思議な感覚だった。 暑さを中和してくれることは無かったが。 時代背景がわかりにくいロシアが舞台。 馬車がでてくるので古い時代かと思い…

人間の土地

著者:サン=テグジュペリ翻訳:堀口大学出版社:新潮社(表紙:宮崎駿) 長い間積んでいたが、ようやく読んだ。 てっきり小説だと思っていたが、飛行機や関連技術が確立されていない時代に 路線パイロットとしての経験をもとに書かれたエッセイ。 言い回しや…

ミトロヒン文書 KGB(ソ連)・工作の近現代史

著者:山内智恵子監修:江崎道朗 出版社:ワニブックス KGBの文書管理をしていたミトロヒンが機密書類を長きに渡り書き写し イギリスに亡命、イギリスの諜報機関に提供した機密文書は膨大。 ソ連の対内外工作活動の具体的な方法や対象の広さには驚かされる。…

あの頃、忌野清志郎と -ボスと私の40年

著者:片岡たまき出版社:筑摩書房 読んでいる間、頭の中ではトランジスタラジオや僕の好きな先生やスローバラードが ランダムに流れていた。 RCの熱狂的ファンが事務所に就職し、衣装担当、マネージャーになり 身近で過ごすことができるなんて夢のようだ。 …

風配図 WIND ROSE

著者:皆川博子出版社:河出書房新社 12世紀のバルト海交易を舞台に描かれる二人の少女の物語。 交易商として生きようとする二人に立ちはだかる地域間の争いや 階級による人間関係などが描かれる。 途中、戯曲形式で書かれたりするので戸惑うが、 慣れると自…

地図と領土

著者:ミシェル・ウェルベック翻訳:野崎歓 出版社:筑摩書房 ウェルベック作品は「服従」、ラブクラフトの伝記かつデビュー作の 「H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って」に続いて3作目。 芸術家ジェド・マルタンの仕事に対するスタンス、家族や恋人との…

帝国図書館-近代日本の「知」の物語

著者:長尾宗典 出版社:中央公論新社 国立国会図書館は一度しか訪れたことがないが、 本書を知り、その歴史に興味が湧いたので読む。 帝国図書館から現在の国立国会図書館に変わったものと思っていたが 意外にも紆余曲折があったよう。 明治時代に前身施設…

リベンジ

著者:五十嵐貴久出版社: 幻冬舎 「リカ」シリーズ第八弾。 二作目の「リターン」の2年後ということで記憶があやふやだったが、 恋人を殺したリカに12発の銃弾を浴びせた青木孝子と生き残ったらしいリカの クロスリベンジやクズキャラ(佐藤)の顛末等々題…

口訳 古事記

著者:町田康出版社:講談社 知っているようで知らない古事記の世界を関西弁でがっつり楽しませてくれます。 町田康さん誇張しすぎだよ~と思いつつ調べてみると 案外忠実な内容だったことに「マジすか」連発。 日本の神様ってこんなに破天荒だったのか。 す…

イクサガミ 地

著者:今村翔吾 出版社:講談社 全三部作の第二作目は前作の「天」に続き「地」。 またまた我慢できずに読んでしまった。。。 詳しいことは書けないが愁二郎の兄弟たちの実力も明かされ、 更に新しい強者も登場し、デスゲーム「蠱毒」はいよいよ熾烈な展開に…

超圧縮地球生物全史

著者:ヘンリー・ジー翻訳:竹内薫出版社:ダイヤモンド社 地球で生命が誕生してから現在をも通り越して絶滅する未来までを盛り込んだ 意欲作である。 気候変化や隕石衝突、大陸移動など過酷な環境変化のなか、 種の大量絶滅を繰り返しつつ乗り越えてきた命…

異常【アノマリー】

著者:エルヴェ ル・テリエ翻訳:加藤かおり出版社:早川書房 一見繋がりが無さそうな登場人物たちの日常や仕事が語られるが、 徐々に不審人物の影がチラつき、不穏な気配を感じさせるように進む。 唯一の共通点として彼らは同じ飛行機に乗り合わせたことが…

祈りの海

著者:グレッグ・イーガン翻訳:山岸真 出版社:早川書房 奇想コレクションの「TAP」を読んで以来のイーガン。 長い間積んでいる間にすっかり色褪せてしまった。 時間をかけて読んでいたため記憶が既にあいまいだが、 ぼうっと読んでいると理解できなくなる…

ウナギが故郷に帰るとき

著者:パトリック・スヴェンソン翻訳:大沢章子出版社:新潮社 近頃ウナギを食していないなあ。 近所のウナギ専門の小さい店が無くなってからだから1年以上経つか。 気になっていた本作をようやく読む機会を得た。 アリストテレスやフロイトもウナギの研究を…

キーエンス解剖-最強企業のメカニズム

著者:西岡杏出版社:日経BP あまり身近に感じた会社ではないため、どんな会社か興味があったので読んだが、 営業をはじめとする仕事への取り組み方、顧客との接し方など、 いつの間にか忘れていた当たり前のことを当たり前に実行することの 大切さを思い出…

太陽が死んだ日

著者:閻連科出版社:河出書房新社 中国のある村で「夢遊」という病が伝染、拡大していく。 抑圧されていた欲望を隠すことなく行使していく人々の姿、 事態の顛末を少年の眼を通して描く。 最初から不穏な空気が流れる。 憂鬱な内容でありながら著者自身を登…