吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

Self-Reference ENGINE ::円城塔

彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。
老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。
そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める―軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作、2篇の増補を加えて待望の文庫化。(「BOOK」データベースより引用)



一つ一つのストーリーは短編のようだが、長編という位置付けのようだ。
それぞれの短編が繋がっているようで繋がっていない、けど繋がっている。。。どっちだ!
独立したセルでありながら別の大きなセルを構成する部品にもなっているのでしょう。
スライドパズルのように物語を動かし、組み替えていくことで無数の組み合わせの物語になっていくのか。
再帰的でもあり、人工知能プログラミングをイメージさせる。
時空を越えて語られる物語なのか、全ての事が同時に行われているパラレルワールドなのか。

 

理解できないストーリーがたくさんあって、理解できる作品はニヤニヤしてしまうほど楽しくて不条理で哲学的でルールが無くて、でもガチガチに固められたルールの中に囚われているのだ。
フロイトや靴下の話は面白すぎ。それからアルファ・ケンタウリ星人、とかね。

 

読んでいて色んな作家さんが頭をよぎりました。
安部公房高橋源一郎筒井康隆、クラーク、あとラファティなんかも。

 

つかみどころが無いし、SFとしてのカテゴライズも難しい。
彼の思考パターンはなかなか理解できないが、難解なものをわかったかのように錯覚させ、加えてユーモアタップリに面白いと感じさせてくれるあたり、凄腕の作家さんに違いない。
そもそもこれがデビュー作とは。。。

 

無理に理解しようとするよりは体験する読書に徹してしまうほうが楽しめる気がします。
頭を柔らかくしないといけませんな。