吉祥読本

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輝く断片 ::シオドア・スタージョン

奇想コレクション中、最多の3タイトルを占めるスタージョンも、これが最後。
大事に積んであったのですが(笑)そろそろガマンができなくなりました。
SFというよりはミステリ色が強かったです。

 

「取り替え子」は初読のはずですが既読感がありました。子供を巡るコメディであり微笑ましい作品。

 

「旅する巌」はSFだが、小説家とエージェントのやりとりが面白い。

 

解説ではサイコサスペンスとあった「君微笑めば」は、題名とは裏腹にブラックな終り。

 

「ニュースの時間です」は真面目な男がニュースを取り上げられる事で異常な行動を取り始めるという作品だが、情報が氾濫している現在を考えるとあり得そうで怖い。
このアイデアは、スタージョンがネタ切れで泣きを入れたところ、ハインラインから提供されたアイデアらしい。そんなコラボは面白い。

 

「マエストロを殺せ」は「海を失った男」に掲載されていた「ぶわん・ばっ!」と同様、
音楽を題材にした作品だが、これは犯罪を絡めたミステリ作品。主人公の行動にハラハラ。
物語の展開といい発想といい、さすがスタージョン

 

「ルウェリンの犯罪」は地味で真面目に生きてきた男が徐々に道をはずし始める悲喜劇を描いています。
オチはなんとも物悲しい。

 

「輝く断片」は著者自身が「自分がいままで書いた短編の中でももっとも力強い作品のひとつ」と語っただけあって期待を裏切らない面白さだった。
面白いと言ってもかなり「血の量が多い」作品なので、読んでいると気持ちがブルーになる描写が続きます。
が、しかし、主人公の男のある意味まっすぐ?な気持ちが、そして「輝く断片」の意味がわかったとき、痛々しくも物悲しい何ともいえない気持ちになるのでした。

 

8編中最も印象的なのは普通の人間が異常な世界に踏み出してしまうという共通項を持つ「ニュースの時間です」「ルウェリンの犯罪」「輝く断片」、そして「マエストロを殺せ」の4編。
他の作品もそれなりに印象に残っているのは、それだけ読み易い作品が多かったからでしょう。
スタージョンのミステリ寄りの魅力と相変わらずの奇想っぷりを存分に堪能でき、満足、満足。



作品リスト
「取り替え子」 「ミドリザルとの情事」 「旅する巌」 「君微笑めば」 「ニュースの時間です」「マエストロを殺せ」 「ルウェリンの犯罪」 「輝く断片」の8編