吉祥読本

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スロー・ラーナー ::トマス・ピンチョン

読んで思い知らされたのが本書を読むには(いや、ピンチョンを読むためには)
アメリカ文学をかなり読み込んでいないと理解できないことがいっぱいあるということ。
それに気付かず、訳者解説やピンチョン自身の序文を読んで痛感させられるのだから始末が悪い。
要するに理解しにくい箇所がいっぱいあると言うことです。
書いていることや状況はわかるのだが、読み終わると「。。。で?」みたいな感じ。

 

結局のところピンチョン自身が語る作品の背景が一番面白いのではないでしょうか。
これに関しては巻末で高橋源一郎も以下のように書いている。

 

この「スロー・ラーナー」の最大の読み物は、もしかしたら、著者のピンチョンによる、長大な序文かもしれない。

 

ピンチョン自身の序文も長いが(約30ページ)、訳者の解説も同じく長い(これも約30ページ)。
これだけ補足や解説が必要な作品なのだから、一発で読みこなせなくても仕方が無い。
(と、自らに言い聞かせているのですが。。苦笑)
これらの短編たちをピンチョン自身は基本、かなり厳しく批評しているが、
誰でも自分の過去の文章に気恥ずかしさを覚えるものなんだと人間臭さを感じさせたりもしました。

 

わりと物語を追えたな、と思い込んでいるのが「低地」「秘密のインテグレーション」でしょうか。
ピンチョンは「秘密のインテグレーション」を好きな作品と語っているが、訳者や初期のピンチョンを研究していた人からは低い評価を受けている。
大衆紙向けに書いた作品なのでわかりやすい作品になったので解説するまでもないが」と訳者が書いていて、それがギリギリだった者としては、ただ実力不足なのはわかってるんですからそんな言い方しなくてもいいじゃないか!と逆切れ気味に思うのでした(苦笑)

 

懲りずに「競売ナンバー49の叫び」を積んでいるので、次は首を洗って待ってろよ、ピンチョン!
と、強がりながら自分の首をせっせと洗っている今日この頃。



作品リスト
「スロー・ラーナー(のろまな子) 序」「小雨」 「低地」 「エントロピー」 「秘密裡に」 「秘密のインテグレーション」