吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2016年8月の読書リスト

天気が荒れた8月もあっという間に終わりです。
久しぶりにいつもより多く読めました。

 

認知症を発症している母親が心臓ペースメーカーを入れる手術をしました。
病院に詰めることが多くてその分、読む時間が増えたってことなんですけどね。
手術は無事成功。あとは死ぬまでに一度は息子のことを思い出してくれたうえで
会話ができればなあと思う今日この頃。
まあ、笑顔でいてくれるから、良しとしないといけないかな。

 

そんなこんなで結局夏休みは取れなかったけれど、移動の電車と病室で読書三昧ということで(笑)



 2016/8/3読了
 /ヤギより上、猿より下
 平山夢明
 少しだけソフトタッチになった感じだがそれでも「尿道を履く」って何だよ。
 相変わらず救いのない世界を描きながら、言葉で表現しきれない愛を感じさせる

 4つの短編。
 気に入ったのは「ダイナー」ばりにハードボイルドな「陽気な蠅は二度、蛆を踏

 む」。
 あと「パンちゃんとサンダル」はまたも虐待を描いているが、辛い選択の中に

 開放を感じさせる結末が平山ワールドの真骨頂って感じ。



 2016/8/6読了
 /謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉
 高野秀行
 納豆はまあ嫌いじゃないし普通に食べたい時に食べる程度だが、
 よくもまあ納豆だけでこれだけの作品に仕上げるとはさすが高野さんらしい
 マニアックさです。
 納豆を通して他国との文化の違いや共通点などを考察するって切り口は面白いです。



 2016/8/8読了
 /中国4.0 暴発する中華帝国
 エドワード・ルトワック  (翻訳:奥山真司)
 日本の対中国戦略が簡略化され提示されている。
 日本の常識と中国の常識の違いを理解しないと痛い目に合ってからでは
 遅いってこと。



 2016/8/9読了
 /魔法の夜
 スティーヴン・ミルハウザー  (翻訳:柴田元幸
 詩を読んでいるような感じなので、ゆったりと静かな夜に情景を浮かべながら
 読むのが 正しい読み方なのでしょう。
 ちょっと急ぎ目で読んでしまったのがもったいなかったと反省。



 2016/8/11読了
 /テロ
 フェルディナント・フォン・シーラッハ  (翻訳:酒寄進一)
 164人乗りの飛行機を乗っ取ったテロリストが7万人のスタジアムに
 墜落させようとする。
 7万人を救うために飛行機を撃墜するドイツ空軍少佐は無罪か有罪かという法廷劇。
 結末は有罪、無罪共に提示されているので正解は無いのだが、テロが横行している
 現在、シーラッハの問題提起を他人事では無く、重く捉える必要があると痛感した。



 2016/8/13読了
 ::ソラリスの陽のもとに
 スタニスワフ・レム  (翻訳:飯田規和
 簡単に言うと知的生命体である惑星ソラリスの海を通して人間の持つ感情とは
 何ぞや?と問いかける哲学的SF。
 派手さは無いが、時々ホラーっぽさ漂うゾクッと感もあって楽しめました。
 続けて新訳版読みます。



 2016/8/17読了
 ::ソラリス
 スタニスワフ・レム  (翻訳:沼野充義
 旧訳では抜けていた部分の復活させ、ポーランド語原典を元にした新訳版を続けて
 読んだ。
 再読することで理解度が増したと思うし、「ソラリスの海」自体の細かい描写を
 想像することに時間をかけられたことで不気味感が増した。
 また、小説としては冗長に感じる人も多そうだが「ソラリス学」の歴史や
 背景説明は、後の「虚数」「完全な真空」に繋がっているんだと体感できて
 楽しめた。
 きっとこの部分、レムは嬉々として書き上げたに違いないと思うのだが。



 2016/8/27読了
 ::ロデリック : (または若き機械の教育)
 ジョン・スラデック  (翻訳:柳下毅一郎
 奇想コレクション「蒸気駆動の少年」を読んで以来のスラデック
 放浪する人工知能を持つロボットの冒険物語の序章。
 導入部こそ読みにくかったが癖のある人間たちと幼いロデリックのズレた会話が
 妙に楽しめる。
 特にロボット三原則をめぐる会話で牧師がやり込められる感じが○。
 暗号とかは正直理解できなかったが、書かれた時期を考えてもよくもまあこんな
 難しいことを考えられたなと、恐ろしきかな奇才スラデック
 続編で本格的な冒険が始まるようだが、未訳なので読めるまで時間がかかりそう。



 2016/8/29読了
 /エスカルゴ兄弟
 津原泰水
 出版社を辞めさせられた編集者とクルクル好きな写真家が本物のエスカルゴを
 提供する専門店をはじめる奮闘記。
 最近、妖しい作品を出してくれないが、この手の雰囲気の作品も悪くない。
 メイン二人とその周辺の登場人物たちの疑似家族感等々、東京バンドワゴン
 思い出させたが嫌いじゃないし、ずっと続けて読んでいたかった。
 「幽明志怪」シリーズでも食に拘っていたが、今回も食べてみたい酒の肴が
 チラホラ。
 猿渡、伯爵にもちょっと触れられていてニヤリ。
 この店の設定されている場所が近所なので本当にあったら絶対常連になっているの
 だが。。。




9冊読了。