吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2016年10月の読書リスト

めっきり寒くなりました。
風邪気味?という感じなので気付かぬふりをしながら水際で戦っています。
寝込んでる場合じゃありませんからね。
読書に関しては、ようやく小説に戻れました。



 2016/10/7読了
 /「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄
 顔伯鈞
 やはり中国の民主化はまだまだ先になりそうだ。
 民主化運動をしていた著者が政府から追われることとなり、広大な中国を舞台に
 逃亡し続けた(続けている)実話だが、執拗に追い続ける国家と著者を助ける
 様々な人たちの姿などリアルな中国が伝わってきた。
 ミャンマー軍閥にはその存在自体に驚かされたが。
 厳しい状況にもかかわらず何故か飄々としているような印象を受けるが、
 著者のそんな姿がむしろこれからの中国を変容させるエンジンになり得るのでは
 ないかと、少しだけ期待を抱いた。



 2016/10/13読了
 /漂流
 角幡唯介
 極限状態の漂流から生き延びた相良浜出身の漁師、本村実が再び海に戻り、
 再度消息を絶つ。
 自らの冒険、探検を題材にしてきた著者が、他者の人生を紐解くべく粘り強く
 丹念に取材したことが伝わって来た。
 出身地の背景と漁師たちの行動との因果関係は大変興味深く読めた。
 反面、二度目に関する情報があまりにも不足しているため、どうしても著者の
 考える結論には同調しにくい。
 勿論、著者が一番それを感じているのだろうが。
 これを機に更に幅を広げた作品を期待しています。



 2016/10/18読了
 /堤清二 罪と業 最後の「告白」
 児玉博
 土地と鉄道と観光を結びつけ盤石な基盤を持つ堤義明の西武王国、独自文化や
 新しい生活を提案しながら拡張した堤清二率いるセゾングループの勢いは
 当時多大なる影響を受けたものだし、まぶしい存在でもあった。
 ある意味二人の確執も部外者からすれば劇場型の企業小説のように映っていたかも
 しれない。
 勝手に穏やかなイメージを持っていた清二だが、父の康次郎同様、相当激しい気性の
 持ち主だったり、義明に対する見下したような物言いは清二の二面性を感じさせ、
 より興味をかき立てられた。



 2016/10/22読了
 /戦国24時 さいごの刻(とき)
 木下昌輝
 戦国時代6人の武将の最期、24時間を描くというアイデアがまず面白い。
 なかでも意外な結末で驚かされた豊臣秀頼淀君のストーリーが恐ろしくも印象的。
 足利義輝の凄味や、徳川家康の走馬灯を一緒に観ているかのような切なさとか、
 色々な味わいを楽しめる短編集だった。


 2016/10/24読了
 ::死の鳥
 ハーラン・エリスン
 ハードで濃密で暴力的な描写が多いにもかかわらず感傷的な気分にさせられる。
 「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」「世界の縁にたつ都市をさまよう者」が
 好きな作品だが表題作を含め他の作品も読み終わるといちいち「いい作品だあ」と
 思わせてくれた短編集だった。
 世界観を理解するのが難しいし、どこが好きかと問われると説明しにくいが、
 また読みたくなる不思議な魅力がある。


 2016/10/30読了
 ::夜行
 森見登美彦
 森見作品の中でも「きつねのはなし」の雰囲気は大好きなのでこの感触はかなり
 好きです。
 10年前の失踪と、語られる関係者たちの不思議な体験にゾワリとさせられる。
 各章の終わり方は曖昧だが、そのぶん想像力を掻き立てられる。
 静かにゆったりと読むほど堪能できる光と闇。
 そして心に響き渡るのだ。。「世界はつねに夜なのよ」




6冊読了。