吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2017年9月の読書リスト

過ごしやすくなってきました。
客先で突然暴走したスマホ君。「戻る」がタップできない、勝手にカメラが連写を開始、次々と立ち上がるアプリたちに電源を切るしかなくて焦りました。
大至急機種変更したが、何で機種変更であんなに待たされるんでしょうかね、平日に。
ま、おかげで読書が進んだんで、許してやろう。



 2017/9/6読了
 ::エクソダス症候群
 宮内悠介
 地球の病院から開拓地である火星の病院へ転職した精神科医カズキと精神医学の
 歴史の物語。
 全体的に抑制された文体は他作品同様だが、それでも各病棟で起きている状況の
 わりに淡々と展開し過ぎていないか?
 と思いつつ読み進んでいたが、カズキの過去を知ると、彼の目を通しているから
 なんだなと納得。
 精神医学にがっつり取り組んでいて哲学してる感じだが、その割にあっさりして
 読み易かった。



 2017/9/10読了
 ::花咲舞が黙ってない
 池井戸潤
 銀行内外の不正や闇と向き合う正義感たっぷりの花咲舞の活躍が読めるのはやはり
 嬉しい。
 ライバル、昇仙峡玲子の登場も今後このシリーズが続くなら(続けてほしい)
 重要な役どころとなりそうな予感。
 さらに半沢直樹との競演などファンサービスたっぷり。
 その中にあって、ひと味違う風味を醸し出していた「神保町奇譚」の余韻が印象的。



 2017/9/18読了
 /バッタを倒しにアフリカへ
 前野ウルド浩太郎
 子供の頃からの思いをずっと持ったまま夢に近づこうとする姿は素直に
 応援したくなる。
 そしてその一途さを貫きながら軽く(軽すぎる)、しんどい状況でもポジティブに
 なれるキャラクターも素晴らしい。
 近頃、高野秀行さんのようなノリのノンフィクションが多いがやはり誰でもが
 できる訳ではない。
 図書館で2カ月以上待っただけのことはある面白本だったが、その情熱を
 応援するには本を買うべきだったと反省している。



 2017/9/19読了
 /量子コンピュータ人工知能を加速する
 西森秀稔/大関真之
 量子コンピュータという言葉自体は以前から意識していたが今一つピンとこない存在
 だった。
 「量子アニーリング」を提唱した日本人教授自身による概説は分かり易く
 (イメージが頭の中で薄っすらと湧く程度だが)今のところ現在のコンピュータに
 置き換わる存在ではなく、「組み合わせ最適化問題」に特化しているとのこと。
 今後どのように利用できるのか、日本の基礎研究のあり方、国家の取り組み方など
 考察するにはちょうど良い入門書。

 

 
 2017/9/23読了
 ::母の記憶に
 ケン・リュウ
 「紙の動物園」より更に中国色が増しているセレクト。
 どの作品もさらっと読める内容ではないため時間を要するが、物語に練り込まれた
 切ない歴史と人々の優しさが鮮明に浮かび上がる様に唸るばかり。
 「草を結びて環を銜えん」「レギュラー」「ループのなかで」「訴訟師と猿の王」
 「万味調和」が好みだったが他の作品も読み応えたっぷりだった。
 それにしても著者がVimで作品を書き上げているとは驚いた。



 2017/9/25読了
 ::ホワイトラビット
 伊坂幸太郎
 「ラッシュライフ」を思い出させるオールドスタイルの伊坂作品。
 とぼけた会話の連続や仕掛けられた伏線はすっかり手慣れたもの。
 最初、これは伏線だな、こんな展開になるのでは?と思いながら慎重に読んでいたが
 途中から、ええい!騙されてやる!と身を任せるようにテンポよく読んで正解。
 クールな黒澤の少し人間臭い面が描かれていて楽しめたし、今村や中村もいい味を
 出していた。
 もう一回ポテチを味わうか。



 2017/9/27読了
 ::穢れの町 (アイアマンガー三部作2)
 エドワード・ケアリー
 「堆塵館」から「穢れの町」フィルチングに舞台を移したルーシーとクロッドの
 闘いがスピーディーに描かれている。
 特異なキャラが多い中でも特に異彩を放つビナディットは「千と千尋の神隠し」で
 体内にゴミを溜めてた神様だったっけ?とかが思い浮かぶキャラ
 (性格はカオナシっぽい?)で今後の展開にも影響を及ぼしそう。
 あっという間に読み終えてしまったが次はロンドンに舞台を移してどんな
 結末になるのか、第三部をじりっと待つ。



 2017/9/29読了
 /アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由
 山野井泰史
 「垂直の記憶」で感じた凄味が感じられず、淡々と過去の経験や心の内をさらりと
 素直に語る感じだったので年齢を重ね丸くなったのかと思いきや、
 読み続けるとやはりよくもまあ落ち着いてそんなことを回想できるなって。
 命を落とした仲間たちのことを淡々と冷静に語るが、その冷静さが
 命を繋げてきたわけだ。
 手足で合計10本の指を失いながらチャレンジを続ける気持ちの強さ、
 クマに顔を齧られたエピソードに感じるユーモラスな人柄に惹きつけられる。
 そのうえ奥さんの強靭さには更に驚かされるわけだが。
 とんでもない夫婦だと改めて敬服します。



8冊読了。