吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

偶然の聖地

著者:宮内悠介
出版社:講談社

 

試行錯誤しながら読んでいたら時間がかかってしまった。
本文を読みながら注釈を読むとリズムが崩れて意味不明となってしまうので章を一気読みして注釈を読みに戻り、注釈を読んでからその前後を読み直す、の繰り返しで落ち着いた。
フィクションを読みながら注釈で著者の体験が引用されていることを知り、時に意味のないつぶやきやプログラミングあるあるに小さく笑う。
円城塔のように注釈の注釈がないだけ読み易いとも思うがラファティを思い出させる
世界観は似ている気がする。


この流れは日本では伊藤計劃あたりから始まっているような気がするが、宮内悠介だけではなく、藤井太洋円城塔、あとケン・リュウとかも、プログラミングをはじめとする専門的な内容を説明もなく使っていることが増えている。
ある意味優しくないが、それだけ世の中にシステムが浸透している証左なのだと思う。
また自分の表現をスムーズに伝えるために無駄な記述を避ける傾向もあるのだろう。
ただし、決して技術的な知識を持っていなければ楽しめないわけではないし、読者を選別しているのではない。
知識があればより楽しむポイントが増えるが、知らなくても雰囲気だけで充分楽しめる。


世の中、知識がない分野のほうが圧倒的に多いのだから、むしろ知らないことを知る楽しみだらけじゃないか。

 
2019/6/7読了