著者:劉慈欣(りゅう じきん)
監修:立原透耶
翻訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ
出版社:早川書房
中国人作家が書いた評価が高いSFという程度の前知識しかなかったので文化革命からの導入に驚いた。
しかし中国の歴史や社会背景と、ナノテクやVRゲーム、物理、地球外生命など様々な要素のコラボが独特の雰囲気を醸し出す。
人力計算機、科学的発展を止める「智子」プロジェクト、ナノ繊維を利用する派手な作戦などアグレッシブでスケール感たっぷりのエンタメ作品としても読ませる。
様々な知識が詰め込まれているわりにハードなSFとは感じさせない点は翻訳のおかげでしょう。
三部作らしいが虫けらの意地を楽しみに待ちます。
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」も本作品の根幹にあり、環境問題が大きくかかわっていることがわかる。
三体問題は知らなかったが、作中の説明とネット検索で何となく理解したふり。
環境問題という地球と共通の悩みがあったり、「智子(ソフォン)」(「ともこ」ではない(笑))の実験に何度か失敗するなど三体人に少し親近感を持ってしまう。
今後、地球人と三体人の接触が描かれるのだろうが、単純な戦いではなく、どちらの文明も同じような内部対立があることだしもう少し人間臭い葛藤が描かれるのかなと予測。
3千万人を使う人力計算機など人海戦術が得意な中国ならではのアイデアは面白い反面、エラーが出ると躊躇なく排除する冷酷さも描かれ、これも「らしさ」なのか?と考えさせる。
アジア圏では初のヒューゴー賞受賞とのことですが、最後まで面白く読ませてくれる作品であることを願います。
2019/10/15読了