吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー

編集:ケン・リュウ
翻訳:中原尚哉/大谷真弓/鳴庭真人/古沢嘉通
出版社: 早川書房

 

思っていたよりも楽しく読めた「三体」で中国作家をもう少し知りたくなり、文庫本になった本書を勢いのまま購入した。
ケン・リュウの序文で「中国SF」には中国の社会背景や歴史に対する暗喩が常にあるのではないかと思われることを危惧するようなことが書かれていたが、それは杞憂に終わったと言える。
SFに中国も欧米も日本も区別するものではないことがよくわかった。
これだけバラエティに富み、知識も豊富な作家たちの作品を読まされると中国を意識するのは人名や地名ぐらいなものだといっても過言ではない。
もちろん中国の持つ社会背景や歴史を意識する作品もあるが、社会背景に対するメッセージ性は欧米の作品にもあるわけだし、中国にだけ特別なフィルターを通すのはよろしくないだろう。
ケン・リュウの作品集を読んだ時と同様の満足感だった。

最初の「鼠年」からしてすぐに引き寄せられ、夏笳の一連のふんわりとした作品に引き込まれ、「1984年」へのオマージュ「沈黙都市」でやっぱり中国って・・・とちょっと意識させられ、
「折りたたみ北京」でこんなイメージの映画があったなと思いながら想像し、
「三体」から抜粋された「円」にやっぱ人間計算機すげーと再読を喜び、
「神様の介護係」でユーモアものかい、と思っていたら「三体」に繋がるようなスケールのでかい展開にと、面白さが尽きない。

「三体」の続編が出るまではケン・リュウのみならず、他の作家の作品も楽しみながら待つというのは大いに有りだと思う。

 


以下収録内容

序文:「中国の夢」 ケン・リュウ

陳楸帆
「鼠年」「麗江の魚」「沙嘴の花」

夏笳
百鬼夜行街」「童童の夏」「龍馬夜行」

馬伯庸
「沈黙都市」

郝景芳
「見えない惑星」「折りたたみ北京」

糖匪
「コールガール」

程婧波
「蛍火の墓」

劉慈欣
「円」「神様の介護係」

エッセイ:劉慈欣陳楸帆夏笳

 


2019/11/8読了