吉祥読本

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無人の兵団 ― AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争

著者:ポール・シャーレ
翻訳:伏見威蕃
出版社:早川書房

 

ネットが繋がらなくなって焦った週末。綱渡りで仕事に影響がなくてホント良かった。

 

近頃何かにつけてAIが取り沙汰されるが、ターミネーターのような世界がいずれ来るのだろうか?
と考えたことがある人は多いのではないだろうか。

自律型ロボット兵器の現在と未来をかなり詳細にこれでもかという情報量。
取っ付き難そうだがターミネーターなど引き合いに出されていたり、レンジャー部隊に所属していた著者の体験に基づいた考察は説得力があり分かりやすい。
人間がAIを搭載した兵器をどのように管理すればいいのか、どこまで共存できるのか、そして任せてしまう局面や、それをどのように抑止することができるのか、倫理的にも法的にも技術的にもとても難しい議論が必要になるが、本書では丁寧かつ根気よくそれらを考察している。

自律型兵器を手に入れた人間の運用次第で途轍もない悲劇が起きるかもしれないし、微妙な均衡による抑止にもなるかもしれないし、核兵器の扱いと同じような状況を想定すべきなのだろう。

自国の兵士の安全のために自律的兵器を導入し、敵国の兵士を倒すことに果たして正義はあるのだろうか?
自律型兵器同士の戦いも起き得るし、テロにだって利用され得るよな、とか、読みながら様々なシミュレーションが浮かんでくる。
アニメやSFの世界は既にそこにあるのだ。

兵器の是非を含め正しい答えなど決して導き出せないが、必ず、それも遠くない時期にそれらの兵器が主役となることは確実なのだ。
今のうちに、そしてずっと考察を続けることは人間として絶対ににやめてはいけないことなんだと思う。

どのような世界においてもテクノロジーの進歩とともに人間の考え方も進歩していかないとスカイネットに制圧されてしまう日がやってくるのかもしれないなと、結局進歩しない思考に戻ってしまうのでした。

でもさ、ターミネーターだって案外人間のアナログな抵抗が通用したり、
大友克洋AKIRAに出てくる炭団だって少年たちにあっさり制圧されてたり、
2001年宇宙の旅のHAL 9000だって停止できたし、圧倒的な差があるものでも何とか知恵を絞れば対抗できるじゃん!
な~んて楽観的な考えが読みながら浮かんで来て、そこが生身の人間の強みじゃね?と思う部分もある。

う~ん、もう一回本書をまじめに読み直したほうがいいかもね。

 


2019/11/24読了