ドイツ崩壊が近づく中で、ユダヤ人から没収した資産を管理するハンガリーの役人バログはその資産を退避するための「黄金列車」運行メンバーとなる。
混乱の中、生きるため、欲求のためあからさまに財産を狙うあらゆる人間たちに対し
可能な限りの役人仕事による抵抗と清濁併せ持つ判断が緊迫感を生む。
欲望を隠そうとしない人間たちをあざ笑うかのようなラストの「彼ら」の登場と小気味よい行動には意表を突かれたが、読後、ゆっくりと頭に細部まで浮かび上がる映像と「彼ら」の矜持に思わず目頭が熱くなり、余韻に浸る。
時折差し込まれるバログの妻とユダヤ人の友人の回想と憂鬱な現実の中で導かれるバログの決意。
本当に大切なものは何か、考えさせる。
不安定で絶望が迫る中でも僅かばかりの矜持と希望を捨てず、時に軽やかに生き抜く姿に共感する。
今年を締めくくるには良い作品と出会えたと思う。
2019/12/27読了