吉祥読本

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毒牙 -義昭と光秀-

著者:吉川永青
出版社:KADOKAWA

 

兵力をほぼ持たない名ばかりの将軍、足利義昭織田信長の庇護を受けながらも
結局対立し、言葉の持つ力で明智光秀や有力武将を利用して信長を追い詰めようと画策する。
結局、光秀は義昭による長年の言葉の蓄積で本能寺へ向かう判断に至る。

光秀がかなり純粋な武将として描かれているが、切れ者である光秀が
そこまで義昭に翻弄されるものだろうかと疑問を持ってしまうが、
戦国の世において戦闘能力が無い中で執拗に謀略のみで信長を追い詰める義昭は
ある意味凄いんだろうな。
心理的な戦いがメインで戦闘シーンがほぼ無いのは物足りなくも新鮮だった。
義昭と信長という正反対のキャラクターの間で重宝され、
翻弄される光秀の姿は憐れでもある。

「言霊」という言葉があるが、いい意味でも悪い意味でも時間をかけて人の気持ちに
浸透していくことは、普通の生活の中でも感じる。
言葉には力があるのだ。
自分の言葉が他の人にとって毒となるか薬となるかは難しいが、
意図的に毒を仕込むのは相当な悪意があってこそだと思うので
なるべく悪意を持たない生活を送りたいものです。
まあ、ぼんやりしている自分の言葉は毒にも薬にもならないか(苦笑)


2020/1/16読了