吉祥読本

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おちび

著者:エドワード・ケアリー
翻訳:古屋美登里
出版社:東京創元社

 

「おちび」とあだ名されるマリー・グロショルツこと、のちのマダム・タッソーの人生が描かれる。
主な舞台となるパリ、フランス革命前後の史実と重ね合わせマリーの境遇が過酷すぎる。
芯の強い女の子だが、自己主張の強さがかえって逆境を招いたりする。
どんな扱いを受けても粘り強く蝋人形の技術と人体の知識を磨くことで
エリザベート女王をはじめ王族との繋がりができたりナポレオンと出会ったりと
波乱万丈の人生は後半に行くにつれ目が離せない。
パリの当時の状況がつぶさに描かれている点も知らないことが多くて新鮮だった。

マダム・タッソーといえばロンドン。しかしロンドンはなかなか出てこない。
残念ながらロンドンに行った際にマダム・タッソーには訪れていなかったので
今となっては悔やまれるが、いつか行きたいなあ。
この時代だとマリー・アントワネットをはじめとする王族やナポレオンが主役の
作品が多いと思うが、パリの市民たちの生活や気持ちの移り変わりがわりと
詳細に描かれており大変興味深い。

かなりのページ数だがいつもよりもケアリーの挿絵が大量に使われ、
これが時にページいっぱいの顔のアップなどで驚かされたりする。
独特の雰囲気の挿絵のため、正直なところ電車などでは人目を気にしてしまい読みにくい。
家で読んでいても相方に「なんか気持ち悪い絵が見えた」と言われる始末。
それでもぐいぐいと読ませるパワーは「アイアマンガー3部作」よりも強くなったように感じる。

ページ数が多いので読み始めるまでの気持ちの盛り上げ方やタイミングが難しかったが、読み始めると最初こそスピードが出なかったけど、後半はスイスイと読めた。
ケアリーは長めの作品が多いので、気軽に読める短編集が出ると嬉しいんですけどね。


2020/2/2読了