吉祥読本

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真鍋博の植物園と昆虫記

著者:真鍋博
出版社:筑摩書房

 

星新一を愛読してきた人からすれば真鍋博和田誠のイラストを思い浮かべながら
懐かしい作品に思いを馳せる事でしょう。
特に真鍋博に関しては特別ではなかろうか。
星新一作品のイメージを補完しているのだが、実のところあまり関係なさそうな
イラストもあったりする。
和田誠のホノボノ感も悪くないが、真鍋博の洗練された無機質なイラストの中に近未来を想像させてくれたものだ。

本作はずいぶん前に出版していた「真鍋博の植物園」「真鍋博の昆虫記」を
一冊にまとめて復活したものだ。
真鍋が名付けた実在しない植物や昆虫は名前である程度何を示唆しているか判断がつくが、だからといってスッと理解できないものもある。
また添えられているテキストを読んでもなおあやふやな印象が残るものもある。
だからじっくりイラストを舐めまわすように見つめていることが多く、
意外と読了まで時間がかかったが、そうすると言いたいことが伝わってきたりするのだ。
多分自分なりに好き勝手にストーリーを考えてみればいいのかもしれない。

描かれた当時を風刺していることが多いようなので、
当時を知らない人からするとより理解しにくいかもしれないが、
今風にアレンジして空想してみるのもいいし、時代背景を調べて深さを知るのもいいだろう。
案外、普遍的な問題提起が隠されていることが多そうだ。


2020/2/10読了