吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

老乱

著者:久坂部羊
出版社:朝日新聞出版

 

高齢化社会の先頭を走る日本にとって認知症の増加は避けて通れない。
自分の母親もアルツハイマー認知症が進行し、身内のこともわからず、
話すこともできずに寝たきりとなっているため、この作品を無視できなかった。

徐々に進行する認知症に戸惑う本人の心の移り変わりや介護をする側の状況が
小説ではあるが実例を基に非常に分かりやすく書かれている。
周りからはわからない本人の戸惑いや怒りが事細かに描かれ、なおかつ介護する側やその周辺の気持ちや状況もよくわかる。

動けるうちは徘徊を心配し、寝たきりになると安心できるなど周囲の心理状態は
不謹慎かもしれないが当事者からすれば本音だったりする。
誰かに迷惑をかけたくないという介護側の思いは本人の束縛感を高め、
何より本人が伝えたいことをうまく伝えられない歯がゆさにストレスを高める。

本人がうまく伝えられないことを慮って少しでも負担を軽くすることを
周囲の人が気を付けていかないと、お互いに穏やかには暮らせないことを理解した。
認知症は進行を遅くすることができてもよくなることは期待できない現実。
受け入れることで、どう接していくべきか考えることもできる。


介護に正解は無い。

そして誰も悪くない。


現実と照らし合わせることが出来たこともあり、色々と参考になりました。
同居できない環境のため、母親の介護は自宅で父親がほぼ対応してくれている。
申し訳ないが老々介護に頼り、それをサポートする形になっているため
偉そうなことは言えませんが、それでも色々と大変なことが多いです。
いずれは我が道。
今は何もなくても将来に備えて読んでおいて損はないと思う小説です。


2020/2/16読了