ジョルジュ食品という会社に、クセの強い社長の伝手で中途入社してきた
部長(=チャラ男)を巡るお話。
と言いたいところだが、チャラ男が主役という感じではない。
会社内の社員たちの視点で語られる様々な人間模様が次々と語られる手法。
自分の視点で語る自分は他人からは全く違う人格として見られている。
仕事の熱意の強弱は人それぞれ。
描かれる内容はどれも普通にどこにでもあるものばかり。
年代や職種や立場でのすれ違いや思い違いなど、誰もが経験しているものだろう。
特に劇的な事件が起きるわけではなく、(いや、起きるのだけど、どんな会社でも
起き得ることなのでさほど劇的感がない、が正解か)、淡々と、しかし確実に
日々が過ぎていくだけの描写は退屈でもあるが、かと言って投げ出そうとも
思えない程度に気になって先を読む。
何となく気怠い雰囲気が漂い、この会社に魅力も感じないし、
特に誰かに共感もしない。
読んでいて何となく息が詰まる感覚というか、妙な圧迫感に少し疲れたが
他作品でもそうだったが、絲山秋子の描く会社やそこで働く人たちのリアルから、
何故か目が離せないのだ。
2020/7/20読了