著者:樋口恭介
出版社:早川書房
ハヤカワSFコンテスト大賞とのことで読んでみた。
正直なところ読み辛くて途中投げ出そうかと思うも、
ここは我慢のしどころと続けてみた。
まあ、結局読み終えることができたが、さほど印象に残る作品ではなかったかな。
この手の作品では円城塔を思い浮かべるが(参考文献にもあった)
円城塔のようなユーモアとか人を煙に巻くような惚けたラファティ的ともいえる
面白さがあるわけではなく、
「ディファレンス・エンジン」(参考文献にもあった)風のスチーム・パンク系の
作品に転換するのか?
とか、
筒井康隆路線が入ってくるか?
など、勝手に右往左往してしまったが、
結局淡々とした作風がそうさせるのか全て違った。
個人的には盛り上がらない感じにモヤモヤする。
うーん。
著者が知識を総動員して熱量をもって書き上げていることはわかるのだが、
気負いすぎているのか同調できない。。。
その熱量が伝わらないというよりも敢えて伝えようとしていない感じもする。
分かる人が分かってくれればいいとか?
亡き父の未完小説を端緒にSFを語り、過去の積み重ねが現在や未来に繋がる様を
淡々と書き連ね、または再構築することで家族を語るという
テクニカルな部分も感じるが、うまくその著者の想いをキャッチできなかったのは
読解力が足りなかったのか、SF作品の読書量が足りないのか。
いや、どっちもか。
梗概を読んで、ああそういうことね、と思った次第。
階層の転換で世界観を難しそうに書いてはいたが、後半は読み易くなってきたので
冗長な部分を無くしてキレのある展開の作品なら次も読めるかな。