戦争の足音が間近に迫っている中、「白い病」と呼ばれる伝染病が流行し始める。
50歳以上が罹患し、死んでいくという設定だが閉塞感漂う若者たちからすれば
自分たちにチャンスが到来してくるだろうと密かに期待し、
年代間の断絶が見えてくる。
そんな時に特効薬を開発した町医者が登場するが、
医者は特効薬の提供を求める戦争を推進してきた指導者たちに、
ある条件を突きつける。
登場人物はいたって少ないうえ、戯曲という体裁のため
あっという間に読めてしまう。
コロナ禍に出版された作品ではあるものの、伝染病(白い病)が主題ではない。
第二次大戦直前に書かれたこの作品を昔のことだと割りきれない、
普遍的なテーマが明確に提示されている。
戦争直前、戦争を推進して来た人たちが白い病に罹患することで
生じる葛藤、市井の人々に覆い被さる絶望と焦燥、
戦争推進派の指導者の子供たちが次の時代の
担い手になりそうな仄かな希望、
平和を望む医師と戦争推進派の対立と苦悩、
更に対立する彼らを呆気なく飲み込んでいく真の悲劇に、
冷徹な現実を見せつけられる。
自分に向けられた課題をどう処理すべきか?
改めて考察と実践の日々が始まります。