吉祥読本

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応仁悪童伝

著者:木下昌輝
出版社:角川春樹事務所

 

なかなか理解が進まない応仁の乱だが、たくましく生きる子供たちの目線で
描いているためか分かり易い。
それでも大いなる内輪揉めのため登場人物の名前でどちらの陣営かを
判断するのは難しいので巻頭にある登場人物のページに指や栞を挟んで
いったり来たりしながら読みました。

大人たちの権力闘争と欲望に巻き込まれる一若をはじめとする
子供たちの奮闘はなかなか読ませてくれるが、
登場人物たちのキャラクターが今ひとつ中途半端な印象だったのが残念。
こんな世の中で生き抜いていくためには子供であれ命がけなのは当然なので
悪童と呼ぶのはちょっと可哀想でしょう。
当時の子供たちは本当に生きるのが大変だったんだな。

寧ろ、大人たちの汚れた生き様のほうが大問題。
なかでも坊主たちの「稚児灌頂」という儀式の惨いこと。
かの有名な一休さんも出てくるが、イメージ崩壊。

木下作品としては物足りなさがあったが、血生臭いシーンの描写力は
相変わらず迫真に満ちている。
それから、土一揆、徳政令に関しては勉強になりました。