吉祥読本

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中国・SF・革命

著者:
・小説
 ケン・リュウ/柞刈湯葉/郝景芳/王谷晶/閻連科/佐藤究/上田岳弘/樋口恭介/
・エッセイ
 イーユン・リー/ジェニー・ザン/藤井太洋/立原透耶
出版社:河出書房新社


勝手に中国人作家によるSFアンソロジーだと思っていたが
中国を舞台にした小説とエッセイ集ということで、
中国人だけでなく日本人やアメリカ人も名を連ねる。

柞刈湯葉の「改暦」、郝景芳(「折りたたみ北京」の著者)の「阿房宮」、
佐藤究の「ツォンパントリ」が秀逸。
いずれも中国の歴史と物語が見事に融合されている。
中国人のしぶとさ、優しさ、社会や組織に対する諦観など
様々な要素が浮かびあがるだけでなく、発想も面白い。
「ツォンパントリ」は深読みすると背筋が寒くなるのだが、どうなのだろう?

「ババヤガの夜」で読んだばかりの王谷晶の作品「移民の味」も面白かった。
これもババヤガ~同様、二人の女性の表現の難しい関係を餃子をネタに
軽そうに描いているが案外深い、面白い視点の作品。

最後に置いてかれた?ように感じた 閻連科の「村長が死んだ」は、
それでもやはり中国社会の問題点をさりげなく描くことに長けているなと思う。
この作家さんの作品の雰囲気は妙に馴染む。

エッセイに関しては藤井太洋のルポが中国SFの盛り上がりを
分かり易く伝えてくれている。
そしてジェニー・ザンの人種問題の本末転倒を含むあれやこれやを
舌鋒鋭く皮肉たっぷりに書き連ねる
「存在は無視するくせに、私たちのふりをする彼ら」には溜飲を下げる人と、
顔を赤くしながら目を白黒させる人が共に浮かぶよう。