著者:郝景芳(ハオ・ジンファン)
翻訳:及川茜
出版社:白水社
最近かなりの割合で中国系のSFを読んでいるが、止まらない。
特にこの作家さんは今まで何作か読んでいるが、
バラエティに富んだ発想と不思議な雰囲気でかなりの率で面白い。
「北京 折りたたみの都市」はケン・リュウの手による「中国SFアンソロジー」の
「折りたたみ北京」とは違い、中国語から翻訳しているせいか、
格差社会に対する風刺や上層、下層の違いなく
中国人が共通に持つ心情が伝わってくるよう。
夫婦それぞれの目線で描かれる表裏一体の「弦の調べ」「繁華を慕って」は
地球を圧倒的パワーで侵略する鋼鉄人による社会の変化と葛藤を描く力作で、
これまた壮大な設定でラストを盛り上げる。
ここまではSFとして楽しめるが、その他の作品はSFという印象よりは
幻想的というか現実と夢の間を彷徨うような曖昧さを伴う作品だった。
「先延ばし症候群」は、ちょっと耳が痛くもある。
とにかく引き出しが多そうで、今後も注目の作家さんです。
●収録作品
「北京 折りたたみの都市」 「弦の調べ」 「繁華を慕って」 「生死のはざま」
「山奥の療養院」 「孤独な病室」 「先延ばし症候群」