著者:大西康之
出版社:東洋経済新報社
個人的な感想だが、リクルートという会社は初めて知った時から今まで、
ほぼ一貫してイメージが大きく変わらない。
胡散臭いなと思った第一印象だったが、それはむしろそれまでの日本には無い
タイプの会社だったが故に理解できないものは怪しいという思うことで
思考停止していたということに他ならない。
知れば知るほど自由で勢いがあってクリエイティブな会社だし、
人材の優秀さに圧倒されたものだ。
敵になったり、協力してもらったり、取引先になったり、
今でこそ途切れているが、何だかんだと関連会社を含めて
付き合いが適度に続いていたため、多くのリクルートマンを知っていたが
眩しいくらい優秀な人材が多かったことは確かだ。
何となく広告屋的な感覚で見ていたが、その昔、リクルートのデータセンターに
初めて入った時、「リクルートはこんなこともしているのか!」と驚いたものだ。
新陳代謝が激しく、常に新しいことにチャレンジしている印象は
今でも変わらない。
自分より優秀な人材を集め、適所に配置し、アメーバ的柔軟さでスピード勝負をかけた
江副社長は、今でも日本には数少ないタイプの経営者と言える。
リクルート事件で大騒ぎになり、世の中では評判が悪いのかもしれないが、
正直なところ面白い経営者としての印象のほうが強い。
今でも成長を続けるリクルートの基礎を作ったことを考えると、
江副社長がもう少し活躍できていたらその後の日本は
もう少し元気になっていたかもしれない。
多様性が叫ばれる現在、多様性に富んだリクルートが当時躓くことが無ければ
今頃世界を代表する会社になっていたのではないかと夢想する。
本書を読んで、その思いをさらに強くした。
江副社長の迂闊さ、それに付け込んで都合よく悪者に仕立て上げるマスコミ、
マスコミに煽られた世論で動いた感のある検察のスパイラルは
リクルートのみならず、日本にとっても痛いものになったのではないか?