著者:門井慶喜
出版社:新潮社
日本で最初となる地下鉄構築事業を構想、建設した早川徳次と
現場で建設に携わった6人の職人たちを中心に描く小説。
資金も無く、情熱と努力で困難な道を切り開いていくストーリーは小気味いい。
人脈を掘り起こし、最大限に生かしながら地道に、粘り強く突き進む。
近頃様々な場面で名前の出てくる渋沢栄一を説得し、
一方、上層部とは関係なく、地中で命を懸ける職人たちの矜持もやはり眩しい。
初めての地下鉄工事に挑む総監督や親方たち職人の人間模様や
地中での苦悩や葛藤やチャレンジにスポットを当てるあたり、
門井慶喜お得意の描き方であり、読み手が求めているものだ。
地位や名誉をもつ人たちの人脈で大きな事業が動くことは
今も昔も変わらないかもしれないし、それはそれで大きな苦労や
努力があるのは認める。
でも現場で汗を流している名もなき人たちの尊さこそ称賛されるべきであり、
日本のインフラを支えていてくれることを忘れてはいけない。
そう、強く思う。
「家康、江戸を建てる」同様、読み易く一気に読める作品だった。