吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

ペッパーズ・ゴースト

著者:伊坂幸太郎
出版社:朝日新聞出版


本書には初回限定ポストカードがおまけとしてあって、

興味のあることや好きなもの、心配なことや怖いことを詰め込んだところ、

 今までの自分の小説の特徴が集まったような物語になりました。

と書いてある。

そして、ポストカードに書いてあった伊坂幸太郎の言葉通りの作品でした。

過去の作品をいくつも思い出しつつ楽しめました。

例えば一連の殺し屋が出てくる作品とか、陽気なギャングシリーズあたりが、

雰囲気も含めて強めに感じた。

その他にもちょっとしたところで思い浮かぶ作品があったので、

ある程度過去作品を読んでいるほうが楽しみ易いかも。

ただ、いつもより分かり易い伏線だったせいか、多少物足りない印象になったかな。


「ネコジゴハンター」の二人は、あの二人組の殺し屋さん檸檬と蜜柑)を思い出す。

二人の会話はこれぞ伊坂作品!って感じで楽しめ、

こんな形で彼らが戻ってきたのであれば大歓迎。

勿論、檸檬と蜜柑の物語が新作で読めたらなおサイコーなのだが。


猫の虐待に関しては直接的な表現はなるべく避け、かなりソフトにしてくれている。

伊坂作品は初期のころに比べ淡々としているなかに残酷な描写が紛れていることが

多くなってきていた印象があるが、伊坂作品にはあまりそれを求めてはいないので

今後もソフト路線で書いてほしい。


伏線と見事な回収を期待していると物足りないし、

現実と小説を曖昧にする手法の好き嫌いもあるかもしれないが、

現代社会の抱える様々な問題に対する伊坂の危機感と期待感を

さりげなく作品に反映させながら、きっちり伊坂流に仕上げているのは流石です。