吉祥読本

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八本目の槍

著者:今村翔吾
出版社:新潮社


「じんかん」が面白かったので少し遡って本作を読んだが、本作も面白い作品だった。

秀吉の小姓として集められた様々な個性を持ち、のちに七本槍と呼ばれた若者たちの

青春物語であり、それぞれの苦さを伴う人生が分かり易く描かれる。

「賤ケ岳の七本槍」と言えば福島正則(市松)、加藤清正(虎之助)が有名だが

その他の5人にも均等にスポットを当てることで「八本目の槍」である

石田三成(佐吉)を多角的に浮かび上がらせ、案外気難しい三成が

彼らの接着剤としての役割を果たしていたという描写は新鮮だった。

脇坂安治(甚内)は関が原で寝返ったことでもともと印象は悪かったが、

ちょっと見方が変わった。

印象が変わったといえば加藤清正も武勇が目立っていたイメージだったが

案外文官としての能力が高かったよう。調べると確かに。

片桐且元(助作)や糟屋武則(助右衛門)もいい味を出していた。


若い頃共に過ごした日々がその後の立場の違いを乗り越えた大切な絆として

作用していてとても魅力的な作品でした。

三成がビックリするぐらい出来すぎに描かれていたが、

福島正則のセリフがそんなことを気にするなと吹き飛ばしてくれた。

加藤清正(虎之助)で始まり、福島正則で締めた構成が見事な作品でした。