著者:今村翔吾
出版社:集英社
高い抑止力(石垣)で戦うことを諦めさせるか、圧倒的攻撃力(鉄砲)で戦いを
終わらせるか。
大津城を主舞台に、共に戦のない世を目指す職人たちの矜持と矛盾を描くストーリーは
最初から最後まで飽きさせない。
戦の最中にも石垣を縦横無尽に張り巡らし修復してしまう「懸(かかり)」
というのは初めて聞いたが、どうも著者の造語らしい。
ただし、そのような状況は実際にあったようで、そうなると侍同士の戦いよりも
厳しいかもしれない。
何せ攻撃される一方のなか、反撃できずに作業を進めるのは圧倒的に不利だよな。
と書きながら先代・塞王の石垣を利用した逆手に取る石垣の設置や、
匡介の反撃シーンなどに興奮した。
武士に引けを取らない職人集団の熱い戦いと、職人らとともに信念を貫く
京極高次はよく知らないが、どちらも人徳者として描かれ、心地よい爽やかさ。
とにかく、登場人物たちの熱意のぶつかり合いは圧倒的に面白かった。
今のところ今村翔吾にハズレ無し。