著者:小田雅久仁
出版社:双葉社
「増大派に告ぐ」、「本にだって雄と雌があります」は読んでいるが
本作を含めそれぞれ印象が違い、著者のイメージが掴めない。
それだけ引き出しが多い作家さんなのかな。
月をモチーフにした3篇のダークファンタジー。
いきなり世界が反転し、ゾワリと不穏な気持ちにさせる
「そして月がふりかえる」が一番好きなタイプの作品だった。
てっきり終わり方が連作集を思わせたが違ったみたい。
「月景石」はちょっと頭を切り替えるのがうまくいかなくて疲れたが
世界観はしっかりと描かれていた。
「残月記」は独裁国家となった近未来の日本を舞台に、
狼男とグラディエーターの融合したような物語なのかと思いきや
想像を超えた切ない愛の物語だった。
「瑠香」がそれほど重要な存在になるとは思っていなかったせいもあり
特に気に留めていなかったが思わぬ展開に
読後、二人の出会いや関係性を読み返した。
全てではないが、色々と腑に落ちた。
どの作品も再読するとより深い味わいができそう。
とにかく、緻密で濃厚な世界の構築力はなかなかなものだ。
寡作なので次の作品がいつ出るのかはわからないが、心して待つ。