吉祥読本

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AI監獄ウイグル

著者:ジェフリー・ケイン
翻訳:濱野大道
出版社:新潮社


世界情勢に関するニュースはウクライナ一色となっているが、

ウイグル問題も今でも継続している大きな問題である。

本書を読むまでここまでのことが起きているとは知らなかった。

欧米が声を上げているのに日本ではなぜか大きく扱われていない、

ということもあるのだろう。

マスコミも政府も経済界も中国に忖度しているからだろう。


ジョージ・オーウェルの「1984」を読んだ人であれば説明がしやすい。

あの世界が既にウイグルに存在しているのだから。

ウイグル人に対する強制収容と再教育という名の洗脳、相互監視、

街に設置される夥しい数のカメラ、不妊手術の強制による民族の破壊、

強制労働などは多少聞きかじっていたが、具体的な内容をより知ると

中国いや中国共産党の酷さに言葉が無い。


中国で会社を運営するには中国の会社と提携しないといけない、

機密であるはずの技術情報を提供しないといけないなど

制約や条件が自由社会陣営にとって不利なものばかりで

大きなマーケットに参加する権利を国家ぐるみで人質にする不公平さや

会社内にお目付け役の共産党員を送り込むことまでは知っていた。

ところがこんなものではなかった。

家族が危険分子と判断されると、会社同様、家庭に共産党員を

「家族」として入り込ませて監視したり、

家庭内にまで監視カメラを堂々と設置してしまうなど、

人権など微塵もない予想以上の監視社会が出来上がっていることに愕然とする。

上海のロックダウンもウィグルのノウハウが生かされているのかもしれない。


こんな状況が有るにも関わらず、経済優先とばかりに見て見ぬ振りをしているのが

今の日本の現状だろう。

日本には関係ないと思っていたらきっと痛い目に合う。

現実と向き合うことは決して楽なことではなく、痛みも伴う。

人権や平和や自由は言葉だけで得られるものではない。

中国に忖度している場合ではない。

アメリカを100%信用するべきでもない。

日本がウイグルウクライナのようにならないためには現実を知り、

本当の意味での自立を急がないといけない。

その時期は、とっくに来ている。