吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

地図と拳

著者:小川哲
出版社:集英社


日清、日露戦争から第二次大戦の終焉まで、満洲国の架空都市を舞台とした

国家の建設と戦争をめぐる群像劇。

日本、中国、ロシアの思惑と登場人物の理想と野望が複雑に絡まり合いながら

歴史を紡いでいく。


戦争構造学研究所を主宰する細川が、日本の敗戦を予測ながら戦争への道を

止められず、それでも未来に対して布石を打とうとする姿が印象的。

巻末の参考資料にも猪瀬直樹の「昭和16年夏の敗戦」があったので

戦争構造学研究所は「総力戦研究所」がモデルだと思われる。

とにかく巻末にある膨大な参考資料も圧巻。

事実を織り交ぜているのでリアルなストーリーは読んでいて気が重くなる。

それでいて展開を知りたくて読む手が止まらない。


「ゲームの王国」同様、理想と現実を小川哲らしさく描き、

600ページを超える大作を締めるラストの情景は切なく、儚く、

長い余韻を残す。