著者:鮫島浩
出版社:講談社
元朝日新聞の記者が実名を出しながら朝日新聞の実態を描いている。
「慰安婦報道」における虚偽、誤報とされた福島原発事故「吉田調書」、
「池上コラム掲載拒否」など、数々の失態は朝日の凋落を加速した。
社内政治に明け暮れ、権力を監視する側から権力側になってしまったメディアに
誰が信頼を寄せるだろうか。
「吉田調書」絡みで退社した著者の戦いは理解できるし大変だったとも思うが
共感があまりできないのは何故か。ということだ。
肝心なところがはぐらかされている気がする。
自分を曝け出しているようで著者にとって都合の悪いところを
隠しているような気がしてならない。
官僚体質の会社に長年在籍することで身についてしまったエリートの
保身があるのではないか。
そんな気持ちがどうしても拭えずに読み終えた。
ただ著者が先頭に立って調査報道に切り替えようと奮闘したことは評価できる。
上層部を含め、朝日の体質をひとりで切り崩すことができない描写は
生々しくて辟易とする。
驚いたのが著者が入社した時の上司の言葉だ。
「権力と付き合え」
ちなみに当時の権力の対象は下記だそうだ。
「経世会」、「宏池会」、「大蔵省」、「外務省」、「米国」、「中国」
メディアが情報を得るため、権力の懐に入り込むことはある程度必要かもしれない。
だが、権力に忖度していることが読者の目に見えてしまうような付き合いが
正しいとはとても思えない。
清濁併せ呑むにも程があると思うのだが。
今後、朝日を含む新聞業界というオールドメディアがどのように変わるのか、
変われるのか、ある意味楽しみだ。