本書の中では「改暦」のみ既読。
表題作はてっきりコミカルなSFかと思っていたが普通に面白いし
リアリティもあってなかなか良い。
単純化してモデリングするのはよくある手法だと思うが、それでもユニーク。
安部公房「箱男」の現代版「令和二年の箱男」の著者自身による解題にある
直方体は単純化の最たるものだが、しかし想像するだけで笑える。
「東京都交通安全責任課」は将来的には有りそうだし、
「家に帰ると妻が必ず人間のふりをしています。」の不思議話もオチは無いけど好き。
冷めた目線で戦争を扱う「ルナティック・オン・ザ・ヒル」は現実感の無さが
寧ろ怖いかも。
広島の原爆が不発だったという歴史改変もの「沈黙のリトルボーイ」なども
多くの日本人を殺戮する目的で落とした原爆が不発のうえ
今度は日本人を巻き込まないように原爆を撤去しなければいけない米軍の
何と皮肉なことか。
こんな歴史だったらどんなに良かったのだろう、とも思う。
面白い題名の作品が多く、それだけでも興味が湧く。
全ての作品が面白いわけではないが、様々な発想がサクサクと楽しめる短編集だった。
【収録作品】
「まず牛を球とします。」
「犯罪者には田中が多い」
「数を食べる」
「石油玉になりたい」
「東京都交通安全責任課」
「天地および責任の創造」
「家に帰ると妻が必ず人間のふりをしています。」
「タマネギが嫌い」
「ルナティック・オン・ザ・ヒル」
「大正電気女学生-ハイカラ・メカニック娘-」
「令和二年の箱男」
「改暦」
「沈黙のリトルボーイ」
「ボーナス・トラック・クロモソーム」