吉祥読本

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寝煙草の危険

著者:マリアーナ・エンリケ
翻訳:宮崎真紀 
出版社:国書刊行会


アルゼンチン文学として評価の高い女性作家マリアーナ・エンリケスの初読み作品。

12編のスパニッシュホラーの短篇集は期待以上だった。

生々しい匂いと湿度を感じさせる不穏さは心の中に巣食う様々な感情が

具象化されたり気付いてしまった時に感じるタイプの恐怖とでも言おうか。

アルゼンチンの抱える社会的背景に詳しく無いが、

解説にもあるように社会不安が色濃く影響していることが窺い知れる。

行方不明扱いとなった死んだ子供たちの帰還、

死体を食む少女たち、

町を呪う老人、

何かを訴えかける赤ん坊の幽霊、、、、

犯罪や貧困、政情の不安定さをバックボーンに生み出されたと考えると

ただのホラーとは一線を画すものであることが理解できる。

(アルゼンチンの「汚い戦争」をざっと調べるだけで憂鬱になる)


ラヴクラフトスティーヴン・キングなどの影響を受けたようだが、

解説にある著者の言葉として

「私たちの現実はすでにホラー要素満載だったから」

という言葉の意味が考えさせる。

 

第二短編集「わたしたちが火の中で失くしたもの」が先に翻訳されていたらしく

好評のため第一短編集の本書が出版されたらしい。

勿論「わたしたちが火の中で失くしたもの」も読むことは決定です。

 

【収録作品】
 「ちっちゃな天使を掘り返す」
 「湧水池の聖母」
 「ショッピングカート」 
 「井戸」
 「悲しみの大通り」
 「展望塔」
 「どこにあるの、心臓」
 「肉」
 「誕生会でも洗礼式でもなく」
 「戻ってくる子供たち」
 「寝煙草の危険」
 「わたしたちが死者と話していたとき」