著者:角田房子
出版社:筑摩書房
甘粕大尉といえば特に映画「ラストエンペラー」では坂本龍一が演じていたので
有名だが満州国を語るうえで外すことができない重要人物の一人でもある。
もともと印象としてはかなり謎が多く、どんな人物だったかと問われると
掴みどころが無く漠然としていたが、本書は非常に分かり易く
綿密な調査と丁寧な聞き取りの成果が存分に発揮されている。
フランス留学、そして満州国で実力を如何なく発揮し
満映理事長の職に就くや文化面での国力の底上げを目指すなど
まさしく国のために力を尽くしていたようだ。
謀略のみに生きた人物では無かったことが分かり、
無骨さと優しさを兼ね備えた魅力的な人間性を感じる。
また大きな視点で世界における日本の立ち位置を考えていたこともわかった。
様々な顔を持ち、陸軍との関係など謎が多いことは変わらないが、
国のために人生を捧げ、自分を曲げない精神的強さを持つ人だったのだな。