吉祥読本

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蒸気駆動の少年 ::ジョン・スラデック

既存のタイム・パラドックスをあざ笑う表題作、スプラスティック・コメディ「古カスタードの秘密」、あの“四重奏”の荒唐無稽なパロディ「ベストセラー」、重力はないと“証明”する男の狂気を描く「月の消失に関する説明」、名探偵のサッカレイ・フィンやフェントン・ウォースが不可能殺人に挑む本格推理小説3篇、なぜか西部劇マニアな宇宙人が襲来する「ホワイトハット」、宇宙人が地球文化に溺れていく様を描く「おつぎのこびと」、グリム童話をさらに残酷に練り直した発禁寸前の「血とショウガパン」ほか、全23篇を収録。 (「BOOK」データベースより引用)

 

「古カスタードの秘密」 「超越のサンドイッチ」 「ベストセラー」 「アイオワ州ミルグローブの詩人たち」「最後のクジラバーガー」 「ピストン式」 「高速道路」
「悪への鉄槌、またはパスカルビジネススクール求職情報」 「月の消失に関する説明」 「神々の宇宙靴」「見えざる手によって」 「密室」 「息を切らして」 「ゾイドたちの愛」「おつぎのこびと」「血とショウガパン」「不在の友に」 「小熊座」 「ホワイトハット」 「蒸気駆動の少年」「教育用書籍の渡りに関する報告書」 「おとんまたち全員集合!」 「不安検出書(B式)」の23編。


「どんがらがん」を読んだ後だからだろうか、全体的に読み易かった。

 

印象的な作品はいくつかあるがその中で好きなタイプの作品は「古カスタードの秘密」 「ゾイドたちの愛」「おつぎのこびと」 「血とショウガパン」 「小熊座」 「教育用書籍の渡りに関する報告書」でしょうか。

 

「古カスタードの秘密」はオーヴンに赤ん坊が入っていたりそれがスパイだったりビックリする設定で展開も早い。風刺が効いていて見事な先制パンチです。
ゾイドたちの愛」は本物人間の社会にひっそりと生きているゾイドたちを描いているが、解説でアメリカ社会のホームレス問題を風刺していたとのことで読み直した。今や日本も。。。
「血とショウガパン」 は、あの有名な「ヘンゼルとグレーテル」の残酷バージョン。これが最も印象的でした。
「小熊座」はプレゼントのテディ・ベアに絡んだホラーでオチは予想通りながら楽しめました。
「ホワイトハット」は昆虫型宇宙人による侵略を描いているが、西部劇かよ!と突っ込みたくなります。
その昔デビルマンで同じような設定があったけど、あれはデーモンに操られた蜘蛛だったっけ(笑)
「蒸気駆動の少年」は暴虐な大統領をタイムトリップして蒸気機関のロボットと取り替えてしまおうという展開。
ターミネーターみたい。あと、「ディファレンス・エンジン」を思い出しました。
「教育用書籍の渡りに関する報告書」は、ほのぼのとした雰囲気ですが、読まれない本が南を目指すという積本が普通の状態になっている身としては耳が痛い話です。

 

ここに挙げなかった作品も含め、全体的に風刺が効いている作品が印象的でした。
ミステリ系の作品もあり、個人的にはこの流れでは必要なかったのでは?と思いましたがスラデックの持ち札の多さを知るためのインデックス的作品集だと思えばいいのかもしれません。
「ピストン式」のようにばかばかしい設定も含め、多才で引き出しの多さを感じました。
解説の
スラデックはたぶん天才だったのだが、才能の使い道を全くわかっていなかった。」
には笑いました。それも断言されてるし!

 

奇想コレクションにふさわしい作品だと思います。