吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2010-01-01から1年間の記事一覧

2010年の10冊

今年ももうすぐ終了。あっという間だった。去年よりもたくさん読んだ気がしたんですが、冊数としては下回りました。月に10冊ペースはやはり難しいみたいです。ということで、早速今年印象に残った10冊を挙げておきたいと思います。ちなみに順位付けではあり…

花のタネは真夏に播くな ::水澤潤

(サブタイトル)日本一の大投資家・竹田和平が語る旦那的投資哲学 上場会社百数十社の大株主である竹田和平さん。貧しい菓子職人だった竹田さんが、どうして日本一の大投資家になれたのだろう。彼の投資の神髄は意外なものだ。まっとうすぎて、みんなが見落…

3652 ::伊坂幸太郎

デビュー10年のタイミングで出たエッセイです。今まで色んな媒体に執筆した1ページから数ページ単位のエッセイ集で、絆のはなしにも掲載されていたものも一部あるようです。全体に伊坂幸太郎の好青年っぷりが伝わってきます。ファンでなければとりたてて読む…

南の子供が夜いくところ /恒川光太郎

諸事情により久しぶりに図書館で借りてきました。久々に行ったら年末年始にシステムが変わるタイミングらしく貸し出しカードも変わってました。受付で「久しぶりのご利用ですね」と言われ、思わず「スンマセン」と謝ってしまった。損した気分(笑)確かに最…

絶対音感 ::最相葉月

出版されてから10年以上経過しているので、当時と事情は変わっているかもしれませんが絶対音感を持たない者からすれば充分すぎる情報量である。巻末の参考文献の数と取材対象者の名前の数を見るだけでかなりの情報収集が為されたことがわかる。 恥ずかしなが…

バレエ・メカニック ::津原泰水

全てを読んでいないが、今までの津原作品のエッセンスが散りばめられている。耽美、幻想、奇想、混沌、退廃等々。しかし、結局のところ今まで読んだ事がないタイプの作品だと思う。早いうちにはっきり明言しておきますが、これ、理解しきれていません(笑)…

一外交官の見た明治維新(上下) ::アーネスト・サトウ

風雲急をつげる幕末・維新の政情の中で、生麦事件等の血腥い事件や条約勅許問題等の困難な紛争を身をもって体験したイギリスの青年外交官アーネスト・サトウ(1843‐1929)の回想録。二度まで実戦に参加して砲煙弾雨の中をくぐり、また攘夷の白刃にねらわれて危…

時計じかけのオレンジ ::アンソニー・バージェス

来年、舞台化されるらしいと知り、しばらく積んでいた本書をようやく棚卸しすることにしました。 ストーリー自体は映画で知っているが、だからといってロシア語と英語のスラングである「ナッドサット」が慣れるまでは読みにくい。 この作品を語る上でスタン…

奇想コレクションシリーズ(河出書房新社)

奇想コレクションインデックス ☆夜更けのエントロピー 【ダン・シモンズ】 ☆不思議のひと触れ 【シオドア・スタージョン】 ☆ふたりジャネット 【テリー・ビッスン】 ☆どんがらがん 【アヴラム・デイヴィッドスン】 ☆ページをめくれば 【ゼナ・ヘンダースン】…

フェッセンデンの宇宙 ::エドモンド・ハミルトン

奇想コレクションの読破を目指し、ひと月一冊ペースで読むことを今年の目標の一つにしていました。自ら勝手に課したノルマではありますが、何とか今年12冊目の奇想コレクションの感想をアップすることができました。このペースだと来年の夏に読破できそうで…

ホルモー六景 ::万城目学

せっかく持っているのに「鴨川ホルモー」を再読しておけばよかったと少し後悔しながらようやく読むことができました。 完全な続編だと思い込んでいたが、6つの短編で構成されたスピンアウト作品でした。前作より高度な戦術と共に熱い戦いが展開されることを…

ピカレスク 太宰治伝 ::猪瀬直樹

太宰治が自殺未遂、心中未遂を繰り返したことは大抵の方がご存知だと思います。気持ちが弱く常に死にたがっていた印象のほうが強いが、本書を読む限りむしろ逆で生きたがっていた印象を受ける。猪瀬さんがそのように書きたかったのだから当然か。 「みんな、…

ばかもの ::絲山秋子

気ままな大学生と、強気な年上の女。かつての無邪気な恋人たちは、気づけばそれぞれに、取り返しのつかない喪失の中にいた。すべてを失い、行き場をなくした二人が見つけた、ふるえるような愛。生きること、愛することの、激しい痛み。そして官能的なまでの…

サイゴン・ピックアップ ::藤沢周

初読みの作家さんです。ちなみに藤沢周平さんとは無関係です。 借金取りに追われ、鎌倉の禅寺に修行僧として潜り込んだ男、「イナガワキョウスケ」の話。坊さんになった動機が不純なんで馴染んできた俗世間からそう簡単に逃れることはできない。というか俗世…

伯林蝋人形館 ::皆川博子

第一次世界大戦に敗れたドイツ。極端なインフレと共産主義との闘いで混迷するなか、退廃的な文化も爛熟を深めてゆく。元プロイセン貴族の士官で戦後はジゴロとして無為に生きるアルトゥール―彼を巡って紡がれた、視点の異なる6つの物語の中に、ナチス台頭直…

華氏451度 ::レイ・ブラッドベリ

ブラッドベリが1953年当時、に危惧していた先端技術への危機意識がこの作品を書かせたようです。先端技術と言ってもブラッドベリが対象にしていたのはテレビ。ただしその技術の対象を読む時代によって置き換えてさえいけば違和感のなくなる普遍的な作品であ…

パプリカ ::筒井康隆

女性誌に連載されていた作品ですが、ずいぶんとオッサンに都合のいいキャラや展開に苦笑してしまいます。もともと筒井作品のナンセンスな作風は嫌いじゃありませんが、この作品に限ってはあまり好きになれませんでした。 ノーベル賞候補になっている主人公の…

秋の牢獄 ::恒川光太郎

近所の紅葉も綺麗になってきたので、読むには丁度良い頃合です。「秋の牢獄」 「神家没落」 「幻は夜に成長する」の3篇。 恒川さんの作品は三作目ですが、「幻は夜に成長する」がちょっと今までと違う印象でした。安定した独特の世界観を持っている作家さん…

洋梨形の男 ::ジョージ・R・R・マーティン

都会に潜む“洋梨形の男”の恐怖を描いた傑作ホラーの表題作をはじめ、身勝手な男が痩身願望の果てに“猿”に取り憑かれる「モンキー療法」、変わり果てた昔の友とのおぞましい再会譚「思い出のメロディー」、ひとりの作家の内面に巣くう暗黒をあぶり出す「子供…

小説以外 ::恩田陸

本好きが嵩じて作家となった著者は、これまでどのような作品を愛読してきたのか?ミステリー、ファンタジー、ホラー、SF、少女漫画、日本文学…あらゆるジャンルを越境する著者の秘密に迫る。さらに偏愛する料理、食べ物、映画、音楽にまつわる話、転校が多か…

血の味 ::沢木耕太郎

「中学三年の冬、私は人を殺した」。二十年後の「私」は、忌まわしい事件の動機を振り返る―熱中した走幅跳びもやめてしまい、退屈な受験勉強の日々。不機嫌な教師、いきり立つ同級生、何も喋らずに本ばかり読んでいる父。周囲の空虚さに耐えきれない私は、い…

木曜の男 ::G.K.チェスタトン

無政府主義者の秘密結社を支配している、委員長〈日曜日〉の峻烈きわまりない意志。次々と暴露される〈月曜〉、〈火曜〉……の各委員の正体。前半の奇怪しごくな神秘的雰囲気と、後半の異様なスピードが巧みにマッチして、謎をいっそう奥深い謎へとみちびく、…

たまさか人形堂物語 ::津原泰水

祖母の形見の零細人形店を継ぐことになったOL澪。押しかけアルバイトの人形マニア、冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、お店はそこそこの賑わいを見せていた。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告に惹かれ、今日も傷ついた人形を抱えた…

センセイの鞄 ::川上弘美

ひとり通いの居酒屋で37歳のツキコさんがたまさか隣あったご老体は、学生時代の国語の恩師だった。カウンターでぽつりぽつりと交わす世間話から始まったセンセイとの日々は、露店めぐりやお花見、ときにささいな喧嘩もはさみながら、ゆたかに四季をめぐる。…

発狂した宇宙 ::フレドリック・ブラウン

墜落したロケットの真下にいたSF雑誌<サプライジング・ストーリー>の編集者キース・ウィントンの遺体は、木端微塵になったのか、ついに発見されなかった。ところが彼は生きていた--ただしそこは、身の丈7フィートの月人が闊歩し、地球がアルクトゥールス星…

炎の眠り ::ジョナサン・キャロル

ぼくは呆然としていた。目の前に、三十数年前に死んだ男の墓がある。そこに彫られた男の肖像が、ぼくだったのだ。そのとき、見知らぬ老婆が声をかけてきた。「ここにたどりつくまで、すいぶん長いことかかったね!」捨て児だったぼくは、自分がなにものなの…

蝶 ::皆川博子

インパール戦線から帰還した男はひそかに持ち帰った拳銃で妻と情夫を撃つ。出所後、小豆相場で成功し、氷に鎖された海にはほど近い“司祭館”に住みついた男の生活に、映画のロケ隊が闖入してきた…。現代最高の幻視者が紡ぎぎ出す瞠目の短篇世界。(「BOOK」デ…

アメリカの夜 ::阿部和重

今回読むまで勘違いしていたのですが、阿部さんは80年代デビューだとずっと思っていました。90年代だったんですね。騒がれたのを覚えていてずっと気にしながらも読まずに来た作家です。当時蓮實重彦や柄谷行人が褒めてたらしいし、数年前に源ちゃんが評価し…

越境者 松田優作 ::松田美智子

松田優作が亡くなって、もう20年以上経っているのかと思うと時が経つのは早いものです。本書は松田優作の最初の妻であり、ノンフィクションライターでもある松田美智子さんが書いた評伝であり、妻しか知らない松田優作が語られている。 松田優作の活躍に関し…

願い星、叶い星 ::アルフレッド・ベスター

短編は「分解された男」とはちょっと印象が違って意外と切れ味がありました。スタージョンと同じような印象を受ける作品がいくつかありましたがクスリとさせてくれる明るさを仄かに感じさせてくれます。 「ごきげん目盛り」「ジェットコースター」「願い星、…