吉祥読本

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発狂した宇宙 ::フレドリック・ブラウン

墜落したロケットの真下にいたSF雑誌<サプライジング・ストーリー>の編集者キース・ウィントンの遺体は、木端微塵になったのか、ついに発見されなかった。
ところが彼は生きていた--ただしそこは、身の丈7フィートの月人が闊歩し、地球がアルクトゥールス星と戦争を繰り広げている奇妙な世界だった・・・・。多次元宇宙ものの古典的名作であり、SFの徹底したパロディであり、SFならではの奇想天外さに満ちた痛快作!



なんと懐かしい雰囲気漂う作品でしょう。「多次元宇宙」の元祖といわれるだけのことはある。
しかし、本書で理論的なものを語るのは野暮というもの。
なにせ「空飛ぶミシン」ですから(笑)

 

変におどろおどろしい描写があるわけではなく、ロケットの爆発に巻き込まれて違う世界に飛ばされ、その世界でどのような状況に陥るか、という男の戸惑いを共に味わえばいいのだ。
危機をどのように切り抜けようかと悩んで考え込んでいるワリに、どこな抜けた行動に出てしまう主人公に親近感を覚えたり、随分短絡的だなと心の中でなじってみたり。
適度なサスペンスと作品発表当時(1954年)のSF事情みたいなものも楽しめるストーリー展開にニヤリとさせられる。

 

唯一面倒くさいなあ、と思ったのはカタカナ表記が続く数ページ。
機械的な言葉を表現する工夫であるため仕方が無いが、読むペースが格段に落ちてしまいます。
トータルではとても読みやすい作品なんですけどね。

 

古典作品には、子供のような純粋な明るさと、未知の世界への憧れとありったけの想像力が詰め込まれている。そんな要素がたっぷりと感じられる作品です。