吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

チョッキー /ジョン・ウィンダム

イギリスを舞台にした四人家族に起こった不思議なできごとを描きます。養子として引き取られたマシュー(12歳)が主人公のジュブナイルっぽいSFで、全体的に緩~く物語は進行します。ある日、マシューの様子がおかしいことに気付いた両親は悩みます。幻覚で…

悪魔の薔薇 ::タニス・リー

読む前には想像していませんでしたが意外にも「剣と魔法」の世界が多くて驚きました。ファンタジックかつブラックな隠し味は絶妙ですが、読むのに苦労する作品もチラホラ。文体に硬質な印象を受ける作品もあり翻訳者との相性の問題かもしれません。(翻訳者…

統ばる島 /池上永一

「竹富島」「波照間島」「小浜島」「新城島」「西表島」「黒島」「与那国島」「石垣島」 八重山諸島にある八つ島を舞台にした物語。 それぞれの話は独立していて短編集の体裁だが、実はちゃんとひとつなぎになっている。それぞれのテイストは違うが「バガー…

竜が最後に帰る場所 /恒川光太郎

「風を放つ」「迷走のオルネラ」「夜行(やぎょう)の冬」「鸚鵡幻想曲」「ゴロンド」の5篇。 「風を放つ」は正直なところ何が言いたいのか意味が掴みきれませんでした。ただ見知らぬ人間との電話での会話は相手が見えないだけでちょっと怖い。そんな怖さを…

キリマンジャロ・マシーン ::レイ・ブラッドベリ

ブラッドベリは詩人だなあとつくづく思う。SF界の叙情詩人と言われるのも頷ける。幻想的な小説とか奇想モノを読む者としてはブラッドベリにあまりSFっぽさを感じませんが解説にもあるように「郷愁」、「離別」というキーワードは作品を表現するうえでピッタ…

世界一の一般人がいる日本

東北地方太平洋沖地震にて被害に遭われた皆様には、心よりお見舞いを申しあげます。まだ不明となっている皆様方のご無事、一刻も早い捜索、救助が進むよう微力ながら願っております。また、厳しい環境の中で救助活動に従事されている方々に、また原発の復旧…

リメイク ::コニー・ウィリス

デジタル技術の発達でハリウッドではフィルムや役者が必要なくなり、往年のスターや映画データを使ったリメイク作品が新作として発表されているという世界。映画の中で本当にダンスを踊りたいという夢を抱いた少女とリメイクを行う男との恋愛ストーリーと共…

地球礁 ::R.A.ラファティ

「宇宙舟歌」が面白かったので調子に乗って読んだが、若かりし頃にもらったパンチをまたまた喰らった感じです(笑) この作品にはわりと詳細なあとがきがついていて、それ自体が全てを物語っているような気がしますがそこからラファティを表現するわかりやす…

末裔 /絲山秋子

初の長編家族小説とあるように、今までの作品群とは趣きが違う。定年間際の公務員富井省三は3年前に妻を病気で喪い、息子は結婚して独立し娘とはうまくコミュニケーションがとれないまま実家を出てしまい居所もわからない。一人暮らしの家の中は荒れ放題とな…

道鏡・家康 ::坂口安吾

道鏡、斎藤道三、豊臣秀吉、黒田如水、徳川家康、織田信長などを描いた中/短編集です。古い作品ゆえ読みにくい部分は多少ありますが独特の坂口安吾節とでもいうのでしょうか、ところどころに見られる講談のような語り口が臨場感を醸し出します。 「道鏡」 …

ページをめくれば ::ゼナ・ヘンダースン

子供を視点の真ん中に据え、侵略もの、異星人との交流、ホラーめいたもの、特殊な能力者など多岐にわたる世界を描いているのだが、著者は学校の教師をしていた経験があり、教師としての視点、女性、母親としての視点から全編をとても優しく包み込んでいます…