吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

【ハ行】の作家

掃除婦のための手引き書  ルシア・ベルリン作品集

著者:ルシア・ベルリン翻訳:岸本佐知子出版社: 講談社装幀:クラフト・エヴィング商會 現実なのか想像なのかいずれにしても到底浮かばない表現力、比喩力が凄い。フォーカスされた状況を簡潔な文章で描き出しているがために理解できずにスルーしてしまうと…

オーバーストーリー

著者:リチャード・パワーズ翻訳:木原善彦出版社:新潮社 アメリカの原始林にそびえる大木を開発による危機から守る人たちの戦いが描かれる。と書くと単純な話しになってしまうが、第一部の登場人物たちの物語がそれぞれ面白い。栗の木の写真を代々撮り続け…

穴の町

著者:ショーン・プレスコット翻訳:北田絵里子 出版社:早川書房 町に関する本を書こうとしている作家志望の主人公が特に特徴のない町に住みつく。活気がない廃れつつある町に住み続けている人たちの閉塞感が読み手にも感染してくる。感覚的ではなく物理的…

虎よ、虎よ!

著者:アルフレッド・ベスター 翻訳:中田耕治 ようやく積んでいたSF古典作品を読む。「破壊された男」でも感じたがアメコミの脚本を書いていたこともあるためかアメコミっぽい。目まぐるしい展開の復讐劇で、粗暴な主人公の性格を含める変転が激しい。ぐい…

「ハ行」の作家

【ハ】●アンソニー・バージェス時計じかけのオレンジ●トム・バージェス喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日●ロバート・A・ハインライン夏への扉●オルダス・ハクスリーすばらしい新世界●マーク・ハッドン夜中に犬に起こった奇妙…

キリマンジャロ・マシーン ::レイ・ブラッドベリ

ブラッドベリは詩人だなあとつくづく思う。SF界の叙情詩人と言われるのも頷ける。幻想的な小説とか奇想モノを読む者としてはブラッドベリにあまりSFっぽさを感じませんが解説にもあるように「郷愁」、「離別」というキーワードは作品を表現するうえでピッタ…

ページをめくれば ::ゼナ・ヘンダースン

子供を視点の真ん中に据え、侵略もの、異星人との交流、ホラーめいたもの、特殊な能力者など多岐にわたる世界を描いているのだが、著者は学校の教師をしていた経験があり、教師としての視点、女性、母親としての視点から全編をとても優しく包み込んでいます…

ロールシャッハの鮫 /スティーブン・ホール

エリック・サンダーソンは目を覚ました。だが自分が何者で、どこにいるのか、まったく思い出すことができない。失われた記憶の手がかりは、今は亡き恋人クリオとの日々を綴った日記だけ。真実を知るというドクター・フィドーラスを探すべく、エリックは気む…

時計じかけのオレンジ ::アンソニー・バージェス

来年、舞台化されるらしいと知り、しばらく積んでいた本書をようやく棚卸しすることにしました。 ストーリー自体は映画で知っているが、だからといってロシア語と英語のスラングである「ナッドサット」が慣れるまでは読みにくい。 この作品を語る上でスタン…

アメリカの鱒釣り ::リチャード・ブローティガン

二つの墓地のあいだを、墓場クリークが流れていた。いい鱒がたくさんいて、夏の日の葬送行列のようにゆるやかに流れていた。―涼やかで苦みのある笑いと、神話めいた深い静けさ。街に、自然に、そして歴史のただなかに、失われた“アメリカの鱒釣り”の姿を探す…

スロー・ラーナー ::トマス・ピンチョン

読んで思い知らされたのが本書を読むには(いや、ピンチョンを読むためには)アメリカ文学をかなり読み込んでいないと理解できないことがいっぱいあるということ。それに気付かず、訳者解説やピンチョン自身の序文を読んで痛感させられるのだから始末が悪い…

スポンサーから一言 ::フレドリック・ブラウン

傑作集と重複する作品もありますが、何度読んでも面白いものは面白い。いずれの作品もバラエティに富んだアイデアの塊です。ショート・ショートはいずれもキレがいい。少し長めの作品も時代を感じさせることを省けば充分楽しめます。よくあるパターンだな、…

分解された男 ::アルフレッド・ベスター

第一回ヒューゴー賞受賞作(1953年)をようやく読むことができました。ガチガチのSFだと思っていましたが、SFミステリと言ってもいいですね。 時代背景は24世紀、人類には人の心を読み取ることができる「超感覚者」(エスパー)たちが存在していた。第一級か…

フレドリック・ブラウン傑作集 --フレドリック・ブラウン

ロバート・ブロック編 星新一訳「闘技場」「イメージ」「事件はなかった」「忠臣」「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」「人形芝居」「黄色の悪魔」「最初の接触」「ジェイシー」「狂った星座」「回答」「ギーゼンスタック一族」「鏡の間で」「ノック」「…

古書の来歴 --ジェラルディン・ブルックス

100年ものあいだ行方が知れなかった「サラエボ・ハガダー」が発見された----連絡を受けた古書鑑定家のハンナは、すぐさまサラエボに向かった。鑑定を行ったハンナは、羊皮紙のあいだに蝶の羽の欠片が挟まっていることに気づく。それを皮切りに、ハガダーは封…

天の光はすべて星 --フレドリック・ブラウン

1997年、人類は星々に対する情熱を失い、宇宙開発計画は長い中断の時期に入っていた。星にとり憑かれた57歳のもと宇宙飛行士マックス・アンドルーズは、そんな世界で無為の日々を過ごしていた。しかし、木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補の存…

20世紀の幽霊たち --ジョー・ヒル

奇妙な噂がささやかれる映画館があった。隣に座ったのは、体をのけぞらせ、ぎょろりと目を剥いて血まみれになった“あの女”だった。四年前『オズの魔法使い』上映中に一九歳の少女を襲った出来事とは!?(『二十世紀の幽霊』)そのほか、ある朝突然昆虫に変身す…

猫のパジャマ --レイ・ブラッドベリ

古書店で目が合いまして。。。何気に手に取ってよく見るとネコ耳が付いてるじゃありませんか!表紙と裏表紙に大きなネコ目、そして耳が折りたたんであって表紙を広げると猫の顔に。ついうっかりレジに。ちょっとショボいけど、帰ってから耳をピラピラ伸ばし…

西瓜糖の日々 --リチャード・ブローティガン

「BOOK」データベースより引用コミューン的な場所、アイデス“iDeath”と“忘れられた世界”、そして私たちとおんなじ言葉を話すことができる虎たち。西瓜糖の甘くて残酷な世界が夢見る幸福とは何だろうか…。澄明で静かな西瓜糖世界の人々の平和・愛・暴力・流血…

黒猫・アッシャー家の崩壊 --エドガー・アラン・ポー

「黒猫・アッシャー家の崩壊 ポー短編集I ゴシック編」 蘆屋家の崩壊を読んで、すかさず入手しました。6編中、再読が3篇でした。ポー生誕200年記念で出版されたらしい。1800年代に生き、これらの作品を書き上げていた事に改めて驚嘆します。本作に納められ…

夏への扉 --ロバート・A・ハインライン

自分への宿題のつもりで8月中に読み終わる予定でいたのですが、何とか間に合いました。夏休みの読書感想文ってかんじで(笑)本書はちょうどいいかもしれないと思っていたもので。記事は今日になってしまいましたが。。。。 久しぶりに再読したのですが、や…

夜中に犬に起こった奇妙な事件 --マーク・ハッドン

今までこの手の本はあまり読んだことがないのですが、昨年書店でふとこの本と目があったので手に取りました。パラパラめくってみて、おっ読んでみるか、と思って購入してからはや数ヶ月。やっと読みました。「BOOK」データベースより引用数学や物理では天才…