吉祥読本

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ページをめくれば ::ゼナ・ヘンダースン

子供を視点の真ん中に据え、侵略もの、異星人との交流、ホラーめいたもの、特殊な能力者など
多岐にわたる世界を描いているのだが、著者は学校の教師をしていた経験があり、
教師としての視点、女性、母親としての視点から全編をとても優しく包み込んでいます。

 

純粋で疑わない心を持つ子供の描写は、教師として、母として常に子供たちを見守っていないと
ここまで描ききることはできないでしょう。
題材としては可能ですが男性作家にはきっとこの描写は難しいと思います。

 

現実には厳しい環境に置かれる子供もいます。しかしその中にあって見守る人がいることで
救われることもあるんだと素直に思えるし、異質なもの同士であっても理解し、受け入れることが
子供の頃にはできていたことを思い起こさせてくれます。
大人になっていくにつれ、つまらないしがらみに捕らわれ後戻りできなくなってしまったことが
一体幾つあったろう。。。
タイプは違うものの、スタージョンと同質の「匂い」みたいなものを感じました。

 

この作品集で最も好きな作品は「小委員会」です。
読んでいれば予測のつく展開ですが、それにもかかわらず感動してしまいました。
この良質な爽やかさをもたらす読後感は多くの人に読んでいただきたい。
SFに苦手意識を持っている人、海外ものに苦手意識を持っている人でもこの作品だったら
何の抵抗も無く読めるのではないでしょうか。
「忘れられないこと」「いちばん近い学校」「先生、知ってる?」「ページをめくれば」なども
印象的ですが「小委員会」が図抜けていると思います。

 

奇想コレクションスタージョン作品は全て文庫化されましたが(嗚呼!)
この「ページをめくれば」に掲載されている作品群こそ文庫化して多くの人に広まってほしいです。



作品リスト(全11篇)
 「忘れられないこと」 「光るもの」 「いちばん近い学校」 「しーッ!」 「先生、知ってる?」
 「小委員会」 「信じる子」 「おいで、ワゴン!」 「グランダー」 「ページをめくれば」
 「鏡にて見るごとく-おぼろげに」