吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年の5冊

バタバタしてるので簡単に。2021年の読書数は55冊と相変わらず低調。そのなかから印象的だった5冊は下記のとおり(順不同) ■テスカトリポカ 佐藤究 ■三体III 死神永生(上・下) 劉慈欣 ■インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー 皆川博子 ■夜想#山尾悠子 山…

2021年12月の読書リスト

2021年12月の読書リスト 12月中旬に、長い間認知症、寝たきり状態だった母親が永眠したため12月分の読書感想はパスしておりました。忘れないように、読んだ作品のリストをメモしておきます。 ■裏切りの塔 著者:G・K・チェスタトン 翻訳:南條竹則 出版社:…

理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

著者:吉川浩満出版社: 筑摩書房 書店で見かけた時にすかさず買ったが、思っていたような内容ではなく やたら時間がかかってしまった。 最初こそ面白く読んでいたが、徐々に哲学書を読んでいるような気になってきて 事実本書のキモは素人の進化論に対する誤…

町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1

著者:R・A・ ラファティ 翻訳:伊藤典夫/浅倉久志監修:牧眞司 おお、ラファティの作品が!と早速飛びついた。 「九百人のお祖母さん」「つぎの岩につづく」「どろぼう熊の惑星」など、 既読作品からの収録が多いことに気付いてちょっと萎えたが、 勿論初…

八本目の槍

著者:今村翔吾出版社:新潮社 「じんかん」が面白かったので少し遡って本作を読んだが、本作も面白い作品だった。 秀吉の小姓として集められた様々な個性を持ち、のちに七本槍と呼ばれた若者たちの 青春物語であり、それぞれの苦さを伴う人生が分かり易く描…

地球にちりばめられて

著者:多和田葉子出版社:講談社 以前から気になっていた作家さんで、ようやく初読。 留学中に祖国が失われてしまったhirukoは、様々な国の人たちと出会いながら 母国語を話す人を探して旅する。 多言語が飛び交い、かつLGBTQや人種問題などを織り交ぜ、 テ…

インヴィンシブル (スタニスワフ・レム・コレクション)

著者:スタニスワフ・レム翻訳: 関口時正 出版社:国書刊行会 「砂漠の惑星」の新訳。 消息を絶ったコンドル号を捜索するため、琴座の惑星レギスIIIに インヴィンシブル号は降り立つ。 調査を進めた結果、コンドル号は見つかったものの乗員たちは 変わり果…

ペッパーズ・ゴースト

著者:伊坂幸太郎出版社:朝日新聞出版 本書には初回限定ポストカードがおまけとしてあって、 「興味のあることや好きなもの、心配なことや怖いことを詰め込んだところ、 今までの自分の小説の特徴が集まったような物語になりました。」 と書いてある。 そし…

地中の星

著者:門井慶喜出版社:新潮社 日本で最初となる地下鉄構築事業を構想、建設した早川徳次と 現場で建設に携わった6人の職人たちを中心に描く小説。 資金も無く、情熱と努力で困難な道を切り開いていくストーリーは小気味いい。 人脈を掘り起こし、最大限に生…

八月のくず 平山夢明短編集

著者:平山夢明出版社: 光文社 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2」の読後、 青空をバックに干されている白いTシャツの表紙が爽やかな本書を読むと なんとなく同じ部類の作品にも錯覚するが、そんなことはあり得ない。 爽やかな表紙に裏腹の…

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2

ブレイディみかこ出版社:新潮社 前作程のインパクトは無かったが、一つ一つの話しはやはり考えさせる内容。 子供や著者や相方の考え方の微妙な違いが浮き彫りになる。 言葉的には多様性流行りだが世代や人種や地域で違う価値観があることを それぞれが受け…

民王 シベリアの陰謀

著者:池井戸潤出版社:KADOKAWA まさか続編が出るとは思っていなかった。 池井戸作品の中では特異な作品だが、池井戸さんもたまに気分転換を 図りたいのかもしれないなと思っている。テキトーな憶測だが。 以前より池井戸さんには半沢シリーズや下町ロケッ…

飢渇の人 エドワード・ケアリー短篇集

著者:エドワード・ケアリー翻訳:古屋美登里 出版社: 東京創元社 翻訳者の古屋美登里さんの熱意から生まれた日本オリジナルの短編集。 古谷さんのイラストまで掲載されていて翻訳者冥利に尽きるでしょう。 このために書き下ろした作品やイラストなど、ケア…

良い戦略、悪い戦略

著者:リチャード・P・ルメルト翻訳: 村井章子出版社:日本経済新聞出版社 2012年に日本語版が出版のため最新情報ではないが、 内容は至ってシンプルなのでさほど古さは感じない。 言われてみれば当たり前の内容だが、案外実行し続けるのは難しい。 シンプ…

最悪の予感-パンデミックとの戦い

著者:マイケル・ルイス翻訳:中山宥出版社:早川書房 2000年初頭、科学研究コンテストで新型インフルエンザを課題とした親子、 ブッシュ政権でパンデミック対策のために召集された医師、 地方の保険衛生官が抱いた違和感など、個別のわずかな人たちがアメリ…

喰うか喰われるか 私の山口組体験

著者:溝口敦出版社:講談社 溝口さんの著書は何度か読もうかな、と思うことがありながら結局初読み。 山口組を長年観察してきただけあって、まるでアチラの世界の人か? と、思えるような不思議な関係性を淡々と描いている。 ご自身や息子さんが襲撃された…

夜想#山尾悠子

出版社: ステュディオ・パラボリカ 雑誌「夜想」の山尾悠子特集号。 読み応えたっぷり。 山尾悠子の作品は読んでいるものの、多分半分も理解できていないことは 認識している。 山尾悠子に思い入れのある人たちの評論や熱い感想を読むにつれ、 その認識が正…

テスカトリポカ

著者:佐藤究出版社:KADOKAWA 「中国・SF・革命」にあった「ツォンパントリ」(本書にも出てきた)が 印象的だったので本書にチャレンジしたがなかなかハードな作品だった。 メキシコの麻薬カルテルの抗争、東南アジアや日本の犯罪組織による臓器売買や 容…

起業の天才!-江副浩正8兆円企業リクルートをつくった男

著者:大西康之出版社:東洋経済新報社 個人的な感想だが、リクルートという会社は初めて知った時から今まで、 ほぼ一貫してイメージが大きく変わらない。 胡散臭いなと思った第一印象だったが、それはむしろそれまでの日本には無い タイプの会社だったが故…

図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで

著者:マシュー・バトルズ翻訳:白須英子 出版社:草思社 考えたことが無かったが、図書館の歴史が案外古いことにまず驚かされる。 そしてその図書館の破壊や焚書が様々な時代、国により繰り返されてきたことにも 驚く。 勝者が敗者の歴史や文化を奪うことの…

月の光 現代中国SFアンソロジー

出版社: 早川書房 ケン・リュウ編アンソロジー第二弾。作家14人16作品。 「移動迷宮」を読んで本作を読んでいないことに気付き、早速読む。 第一弾に比べると派手さは無いが、バラエティに富んでいて楽しめた。 雰囲気が好きでグッと心を掴まれた「おやすみ…

中国史SF短篇集-移動迷宮

出版社:中央公論新社 「中国史」を舞台としたSF短編集。 今まで読んだ「中国史」を絡ませたSFは面白いと思う作品が多かったので 本作品集はとても興味深かった。 中国史に特に詳しいわけではないが、中国らしい雰囲気を生かしつつ もっともらしい法螺で歴史…

誰がために医師はいる ―クスリとヒトの現代論

著者:松本俊彦 出版社:みすず書房 薬物依存症と向き合い続けてきた精神科医による、自身の来歴や依存症患者との数々の葛藤が率直に書かれている。医師であれ、患者であれ、向き合った人ではないと到達できないような考え方や苦悩が伝わってくる。薬物の依…

昭和23年冬の暗号

著者:猪瀬直樹出版社:中央公論新社 「ジミーの誕生日」の改題と知らず再読。 ミステリーめいた展開で、マッカーサーや天皇家、その周辺の様々な人たちの 入り乱れる思惑は著者の推測を含むが面白い。 天皇家の存続や戦犯や戦犯から排除された人たちの背景…

インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー

著者:皆川博子出版社:早川書房 「開かせていただき光栄です」「アルモニカ・ディアボリカ」に続く完結編。 アメリカ独立時を舞台に移し、国王軍の一員となっていたエドは囚人となっていた。 エドの心情が謎のまま、徐々に紐解かれる経緯は読ませてくれるが…

琥珀捕り

著者:キアラン・カーソン翻訳:栩木伸明出版社:東京創元社 数年前、古くからの取引先の方と打ち合わせ中に本の話になり、読書好きだということがお互いに分かったのでちょっと盛り上がったのですが、仕事の発注のようなノリで「おススメ100冊」のリストと…

三体Ⅲ 死神永生(上/下)

著者:劉慈欣翻訳:大森望/ワン チャイ/光吉さくら/泊功出版社:早川書房 遂に完結。 前作までのあらすじのおかげでスッと入り込めたが、「面壁計画」の裏で 「階梯計画」が進んでいたらしい。 この計画の推進者である程心を中心に、これでもかとばかりに…

ジャックポット

著者:筒井康隆出版社:新潮社 短編小説集だと思っていたが、筒井康隆自身を語るエッセイみたい。 自身の心情と小説(妄想)が入り乱れ、自由気ままに爆発している。 韻を重ねながら機関銃のように羅列する言葉たちの小気味よさと面倒くささは 筒井康隆の独…

郝景芳短篇集

著者:郝景芳(ハオ・ジンファン)翻訳:及川茜出版社:白水社 最近かなりの割合で中国系のSFを読んでいるが、止まらない。 特にこの作家さんは今まで何作か読んでいるが、 バラエティに富んだ発想と不思議な雰囲気でかなりの率で面白い。 「北京 折りたたみ…

ポストコロナのSF

著者&作品小川哲「黄金の書物」/伊野隆之「オネストマスク」/高山羽根子「透明な街のゲーム」/柴田勝家「オンライン福男」/若木未生「熱夏にもわたしたちは」/柞刈湯葉「献身者たち」/林譲治「仮面葬」/菅浩江「砂場」/津久井五月「粘膜の接触につ…