著者:平山夢明
出版社: 光文社
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2」の読後、
青空をバックに干されている白いTシャツの表紙が爽やかな本書を読むと
なんとなく同じ部類の作品にも錯覚するが、そんなことはあり得ない。
爽やかな表紙に裏腹の内容は、平山夢明全開。
まるっきりタイプの違う読書に少しだけ頭と心が痛くなる。
表題作の「八月のくず」は主人公の目的が最初からわかるが、
その顛末は笑ってしまうような怪談。
「箸魔」のおぞましさは思っていた以上の最悪な状況に、さすが平山夢明というか
よくもまあこんな酷い事を思いつくのか。。。
「ふじみのちょんぼ」は今回の短編中で最も平山夢明的愛情が感じられた
作品だと思うが、それにしても容赦ない。
絶望的で過酷な環境の中でより一層の絶望へと進んでしまう人間の哀しさと
しぶとさと残忍さ。
絶望の先にほんのり見えた希望の灯りを無慈悲な闇に変えてしまう世界は
平山夢明の真骨頂と言える。
一気読みするのがしんどく、基本1日1話のペースで読んでいたが
それでも濃厚な味わいにげっそりしてしまう。
久しぶりに読んだ平山夢明は、相変わらず毒が強い。
ただし、今回は少々合わない作品がいくつかあった。
このコロナ禍とか、嫌な事件を思い浮かべてしまったりしているのかもしれない。
いつものことだが、著者の作品を読んだことが無い人にはおススメしない。
自己責任でどうぞ。