吉祥読本

読書感想。面白そうな本なら何でも読みたい!

2024-01-01から1年間の記事一覧

生き物の「居場所」はどう決まるか-攻める、逃げる、生き残るためのすごい知恵

著者:大崎直太 出版社:中央公論新社 時々気づかなかった視点になるほどね~と思わされるが もう少し広い意味での生き物を想像していたので読み始めは馴染めなかった。 後半になるとチョウの専門家である著者の研究がなかなか奥深いことに気付き 引き込まれ…

国歌を作った男

著者:宮内悠介出版社:講談社 様々な分野の13篇の短篇集。 開高健を題材とした「パニック-一九六五年のSNS-」は既読だが面白さを再認識。 その他「ジャンク」「国境の子」「夢・を・殺す」「十九路の地図」が好みで どれも宮内悠介らしさで溢れている。 …

わたしたちが火の中で失くしたもの

著者:マリアーナ・エンリケス翻訳:安藤哲行出版社:河出書房新社 「寝煙草の危険」が面白かったので熱が冷める前に読む。 アルゼンチンのホラー・プリンセスと呼ばれる著者だが 「寝煙草の危険」同様、自分の思うホラーという括りには収まらない作品ばかり…

江戸咎人逃亡伝

著者:伊東潤出版社:徳間書店 佐渡、花街、奥深い山で繰り広げられる逃亡劇など3篇の逃亡、追跡が描かれる。 逃亡と言えば吉村昭さんの「長英逃亡」「破獄」などが思い浮かぶ。 客観的に読む逃亡を扱う作品はとても面白いが、 理不尽に逃亡を余儀なくされる…

カーテンコール

著者:筒井康隆出版社:新潮社 25の掌編集。 うち2編は「ジャックポット」からの再収録のため既読。 表紙はとり・みきさんだった。 かつての毒はだいぶ薄まり哀愁を感じる作品多め。 「プレイバック」「カーテンコール」はまるでご自身の見る走馬灯を 共有さ…

フェルマーの最終定理

著者:サイモン・シン翻訳:青木薫 出版社:新潮社 「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」 フェルマーの残したこの言葉から数多の数学者たちが様々なアプローチで 証明を試み積み重ねられた考察を…

寝煙草の危険

著者:マリアーナ・エンリケス翻訳:宮崎真紀 出版社:国書刊行会 アルゼンチン文学として評価の高い女性作家マリアーナ・エンリケスの初読み作品。 12編のスパニッシュホラーの短篇集は期待以上だった。 生々しい匂いと湿度を感じさせる不穏さは心の中に巣…

入門 山頭火

著者:町田康出版社:春陽堂書店 勿論の事、山頭火は名前しか知らないが町田さんが解説してくれるならと入門。 実はご自身も知らなかったらしく 「物書きの看板を上げておきながら山頭火も知らないでどうする。 世の中をなめているのか。殺すぞ」 と言われた…

ハーレム・シャッフル

著者:コルソン・ホワイトヘッド翻訳:藤井光出版社:早川書房 「地下鉄道」「ニッケル・ボーイズ」に続く3冊目。 今までの作品と少しテイストが違い、ノワールなテイストが漂う。 3つの物語で構成される連作集となっている。 舞台は1959年~1964年、ニュー…

一寸先の闇-澤村伊智怪談掌編集

著者:澤村伊智 出版社:宝島社 気になっていた作家さんの初読み。 ほぼショートショートで21編収録されているため題名だけでは 思い出せないものもあるがバラエティに富んだ怖さの描き方に 引き出しの多さを感じる。 学校からのお知らせのみで構成されてい…

硫黄島上陸-友軍ハ地下ニ在リ

著者:酒井聡平出版社:講談社 「硫黄島」における激戦で日本軍の守備隊2万3千人中、生還できた人は約千人。 硫黄島の致死率は実に95%。 未だに1万人以上の遺骨が還れずにいる理由を調査する記者の熱意が伝わってくる。 遺骨の帰還事業に積極的に参加し、独…

本の幽霊

著者:西崎憲出版社:ナナロク社 ページ数(115P)が少ないわりに装幀が贅沢な作りな短編集。 図書館でみかけて気になったので読んでみたが、思っていたのと違い どの作品も劇的に盛り上がるわけでもなく、本に関わるちょっと不思議なことや 日常の断片の記…

時間のかかる彫刻

著者:シオドア・スタージョン翻訳:大村美根子出版社:東京創元社 先月「夢みる宝石」を読んだ勢いのまま同じく積んでいた本書にチャレンジ。 いきなり「ここに、そしてイーゼルに」でスタージョンの洗礼を受け途方に暮れる。 何冊も読んでいるのになかなか…

鏖戦/凍月

著者:グレッグ・ベア翻訳:酒井昭伸(鏖戦 オウセン)/小野田和子(凍月 イテヅキ)出版社:早川書房 2022年に逝去したグレッグ・ベアの追悼として「鏖戦」「凍月」の中編2編収録。 「鏖戦」は異星種族間の長い闘いをそれぞれの視点から描くが、 独特の漢…

大陸はどのように動くのか 過去と将来の大陸移動

著者:吉田晶樹出版社:技術評論社 能登半島で大きな地震が起きてしまい、改めて日本の災害の多さにため息が出る。 震災が起きるたびに心ばかりの募金と祈ることしかできないのが歯痒い。 そんな折、図書館でふと目に入ったので思わず手に取った。 大陸が今…

歌われなかった海賊へ

著者:逢坂冬馬 出版社:早川書房 前作「同志少女よ、敵を撃て」はエンタメ的に仕上げられた中に考えさせる内容が 仕込まれていたが、本作は全てにおいて考えさせる作りだと感じた。 著者が本当に書きたかったのはこちらなのではないかと。 ナチス政権下のド…

夢みる宝石

著者:シオドア・スタージョン翻訳:永井淳出版社:早川書房 長い間積んでいたが、昨年新訳版が出てしまったので慌てて読む。 久しぶりのスタージョンはやっぱりスタージョンだ。当たり前だ。 「人間以上」同様、特殊能力と人間関係の描き方が独特で ストレ…

戦国武将伝 東日本編/西日本編

著者:今村翔吾出版社:PHP研究所 ■東日本編 各都道府県から武将を選び、東日本編、西日本編として2分冊の短編集として仕上げている。東日本編は有名どころの武将から全く名前を知らなかった武将まで北海道・東北・関東・中部地方の武将が23人取り上げられ、…