著者:グレッグ・ベア
翻訳:酒井昭伸(鏖戦 オウセン)/小野田和子(凍月 イテヅキ)
出版社:早川書房
2022年に逝去したグレッグ・ベアの追悼として「鏖戦」「凍月」の中編2編収録。
「鏖戦」は異星種族間の長い闘いをそれぞれの視点から描くが、
独特の漢字表現は酉島伝法を思わせ翻訳者の技量とともに慄く。
原作がどのように書かれたのか興味深いがやはり翻訳者のセンスが凄くないか?
最近苦労しながら読んだ酉島伝法のおかげでワリと読み易く感じたが
ハードでキレがあり、難解でもあるSF作品だった。
とても約40年前の作品とは思えない。
「凍月」は月を舞台とした作品。
地球から死んだ人間の頭部だけ冷凍状態で410人分取り寄せ、
月に保存し、記憶を読み込もうとする一族を中心に
それらを阻止しようとする組織などが絡み、政治色、宗教色が濃い作品。
終盤のある人物の自殺が何とも皮肉な結果だなあと。
これも約30年前の作品だが現代の作品と言われてもさほど違和感がない。
モデルとなった宗教団体などもあるらしく、
特にアメリカ社会にとって普遍的なテーマを扱っているとも言えるだろう。