吉祥読本

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異常【アノマリー】

著者:エルヴェ ル・テリエ
翻訳:加藤かおり
出版社:早川書房


一見繋がりが無さそうな登場人物たちの日常や仕事が語られるが、

徐々に不審人物の影がチラつき、不穏な気配を感じさせるように進む。

唯一の共通点として彼らは同じ飛行機に乗り合わせたことがあるようだ。

そしてパリからニューヨークに向かうその飛行機は

超巨大な乱気流に巻き込まれていたが破損しながらも無事に着陸していた。。。


明確な情報を知らないまま何となくミステリー作品だと思い込んでいたので

殺し屋から始まる様々な人物に関する話を辛抱強くかつ注意深く読んでいたが

第一部終盤の思わぬ展開にビックリ。

まさしく異常状態。

SFだったのか?と思いながら読み続けるも宗教、哲学、政治など

様々な要素をぶち込んだ分類の難しい作品だった。


先日読み終えたイーガンの「祈りの海」同様、宗教関連の記述も多かったが

本作では宗教家たちの右往左往や見解がシニカルに描かれたぶん

苦手意識はあまり湧いてこずむしろ楽しめた。

各国の政治家に対する扱いも面白かった。

皮肉たっぷりに語られるアメリカ大統領の言動や行動、

きっとこんな感じだろうと思わせるキンペイの描き方にフランス人らしさを感じる。

これ以上詳しくは書かないが、

ラストはまあそんなもんか~、というのが率直な感想。

ただし、最後に米大統領の下す命令は大いに可能性がある展開だなと納得してしまう。

日本の政治家だったらどのような判断をするのだろうと考えたが、

コロナ禍の右往左往を思い起こすと、休むに似たりかな。